【結論】
日次で人件費を出している会社でも、そこに入っているのはたいてい時給者のぶんだけです。社員の月給は日ごとに動かないので、打刻から積み上げる計算に乗りません。その結果、毎日見ている人件費が、実際に出ていく金額の一部分だけを映しているという状態が起きます。TEAL BIは、月額の給与をその月の所定時間で1時間あたりに直し、その日その人が実際に働いた店舗へ、時間の比で寄せます。通勤手当と法定福利費も同じ行に乗せます。労務に問い合わせなくても、翌朝には社員込みの人件費が並んでいる状態を作るための計算です。
【この記事でわかること】
・日次の人件費に社員のぶんが入らない、構造的な理由
・月額の給与を、1日・1店舗に落とすときの決め方(所定時間・配賦・割増)
・法定福利費と通勤手当まで乗せないと、実際の支出にならないこと
・労務の締めを待たずに、当月の着地まで出せるようになる範囲
・いまどこまで動いていて、どこからが先行検証なのか
「今日の人件費」に、社員のぶんは入っていますか
毎日見ている人件費に、いちばん長く店にいる人が入っていない
打刻から積み上がるものだけが並ぶ
- アルバイト・パートのぶんは毎日出る
- 社員の月給は日ごとに動かないので入らない
- 社員込みの金額は、労務が締めたあと
月額を時間に直して、同じ行に乗せる
- その日いた店舗へ、働いた時間の比で寄せる
- 通勤手当と法定福利費も同じ行に乗る
- 翌朝には社員込みで並んでいる
日次の人件費が軽く出るのは、集計が間違っているからではなく、重いほうが入っていないからです。
日次の人件費をご覧になっている会社に、その数字はどこから来ているのかを伺うと、ほとんどが勤怠システムの打刻とお答えになります。打刻に時給を掛けたものが、その日の人件費として並んでいます。ここまでは、多くの会社で毎日動いています。
ところが、この作り方だと社員が丸ごと落ちます。社員は打刻していても、その打刻に掛ける時給がありません。月額で決まっているからです。掛ける相手が無いので、金額としては0円のまま日次の表に並びます。店にいちばん長くいる人が、日次の人件費に1円も出てこないということが起きます。
この状態で人件費率を見ると、社員比率の高い店ほど数字が良く見えます。実際には社員の人件費が乗っていないだけなのですが、表の上ではそう見えません。そして月が締まって社員のぶんが乗った瞬間に、その店の率が跳ね上がります。毎日見ていたのに、最後に驚くという形になります。
月給は日ごとに動かない。だから、日次の表から外れます
なぜ落ちるのかは、はっきりしています。時給者の人件費は「時間 × 単価」で、片方が毎日動くので日次になります。月給者は月額が先に決まっていて、日ごとに動く量がありません。割り算をして日に配る作業を誰かがやらないかぎり、日次にはなりません。
そしてその作業は、たいてい社内のどこにもありません。勤怠システムは打刻を持っていますが、給与額を持っていません。給与計算は月に1度、別の場所で動いています。給与計算を社会保険労務士の先生に外へ出している会社では、そもそも社内に金額がありません。「うちは丸投げです」というお話は、珍しくありません。
さらに、社員は1つの店だけにいるとは限りません。ヘルプで隣の店に入る、複数店を見ている、月の途中で異動する。月額の給与を「どの店の費用か」に振り分けるには、その人がその日どこで何時間働いたかが要ります。これは勤怠側にしかない情報です。金額と勤務先が、別のシステムに分かれて置かれているのが、日次にならない本当の理由です。
月額を所定時間で割って、その日いた店に寄せます
TEAL BIは、この振り分けを毎晩の処理として持っています。手順は3つです。
| やること | 必要になるもの | |
|---|---|---|
| 1 | 月額の給与を、その月の所定労働時間で割り、1時間あたりの単価に直す | 基本給・諸手当・契約上の所定時間 |
| 2 | その日の打刻時間に掛けて、働いた店舗へ時間の比で寄せる | 日別・店舗別の打刻(勤怠連携) |
| 3 | 通勤手当と法定福利費を、同じ行に乗せる | 定期代・会社負担率の設定 |
2つ目の「時間の比で寄せる」が、この計算の中心です。ある社員がその日にA店で6時間、B店で2時間働いたのなら、その日の人件費は6対2でA店とB店に分かれます。所属店に全額を付けるやり方もありますが、それだとヘルプに出した店の負担が消えて、受け入れた店の数字が良く見えます。店舗別に見るための数字なので、実際にいた店に置くほうを既定にしています。
残業の扱いは会社ごとの設定です。固定残業(みなし残業)を月額に含めて、そのぶんを所定時間の側に入れる会社もあれば、月ごとの実績で変動させる会社もあります。深夜割増、法定休日、月60時間超の割増も、使う・使わないと率を設定として持ちます。計算式の中に数字を書き込んでいないので、就業規則が変わったときに設定だけで追随できます。
法定福利費を乗せないと、実際に出ていく金額になりません
給与の額面だけを人件費として置くと、会社が実際に払っている金額より小さく出ます。社会保険料と労働保険料の会社負担ぶんが乗っていないからです。この負担は小さくなく、額面の1割から2割という水準になります。
TEAL BIでは、この負担を会社ごとに設定した率で乗せます。乗せる・乗せないも選べます。通勤手当も同じで、人件費に含めるかどうかを会社の考え方で決めます。ここを「含めない」に倒している会社もあり、どちらが正しいという話ではありません。社内の全店で同じ扱いになっていることのほうが大事です。
率を設定として持っている理由は、あとから「この数字はどう作ったのか」を説明できるようにするためです。計算式の中に直接書いてしまうと、翌年に率が変わったときに誰も追えなくなります。設定として置いてあれば、いつ何を変えたのかが残ります。
労務に、毎月おなじことを聞かなくてよくなります
社員込みの数字を出すために、毎月おなじ往復をしている
労務の締めを待って、聞いて、貼る
- 月次の給与が固まるまで社員ぶんが出ない
- 本部から労務へ、店舗別の内訳を依頼する
- 受け取った数字を、表に貼り直す
前日ぶんが、翌朝そろっている
- 給与の情報は月に1度置いておくだけ
- 日々の割り振りは夜間に自動で走る
- 当月の着地見込みも同じ経路で出る
労務の仕事を速くするのではなく、労務に聞かなくても分かる状態にする、という方向です。
この計算が動くと、変わるのは数字の精度よりもやり取りの回数です。いま多くの会社では、社員込みの人件費を知りたい本部が、労務や経理に依頼して、店舗別の内訳を作ってもらっています。依頼する側も作る側も、毎月おなじことをしています。
割り振りを毎晩の処理にしておくと、この往復がなくなります。労務側にお願いすることは、給与の情報を月に1度置いていただくことだけで、日々の割り振りには触っていただきません。「毎日残業しているのに、何にそんなに時間がかかっているのか、本人にも説明しづらい」という種類の仕事が、ここに1つ含まれています。
もう1つ変わるのが、当月の着地です。社員のぶんが日次で乗るようになると、月の途中でも「このまま行くと今月の人件費はいくらになるか」を、社員を含んだ金額で置けます。月末に近づいてから手を打つのではなく、月の半ばで気づけるということです。
毎晩の処理に組み込まれていて、朝には並んでいます
ここまで書いた月給者の割り振りは、毎晩の処理として組み込まれています。前日ぶんの実績と当月の着地見込みが、朝の6時半には店舗別に並んでいます。
お客様側でご用意いただくのは、社員の給与情報(基本給・諸手当・通勤手当・所定時間・固定残業の有無)と、社員の打刻が店舗別に取り出せる状態の2つです。給与情報は社内でも見られる方を限る形でお預かりし、誰がいつ参照したかの記録を残しています。
いまお使いの労務管理システムは、そのままで構いません
給与の情報をどこから受け取るかは、お使いの労務管理システムに合わせます。SmartHRをお使いの企業様であれば、給与項目の対応——どの項目を基本給として読み、どれを手当として足すか——を設定として持たせる形で受け取ります。「月額」に「住宅手当」「家族手当」を足して基本給とする、といった読み替えを、会社ごとに登録できます。手当の名前は会社ごとに違うので、読み替えの表を持たないと必ずどこかで合わなくなります。
SmartHR以外の労務管理システムをお使いでも、スムーズな連携はすぐにお作りできますので、ご相談ください。受け取るのは給与の項目と金額だけで、労務管理システム側の運用を変えていただく必要はありません。どの製品をお使いかを最初にお聞かせいただければ、その構成のまま出せるかどうかを先にお返しします。
勤怠の側は、ジョブカン/King of Time/タッチオンタイムに接続実績があります。この計算の分かれ目になるのは、社員の打刻が店舗別に取れているかどうかです。社員は打刻を免除している、あるいは所属店の打刻に固定している、という運用の会社もあり、その場合は割り振りの元になる時間がありません。ここは製品の制約ではなく、運用の確認事項です。
実際に本番稼働している連携先
この記事は「何が動いていて、何がこれからか」を主題にしているので、連携先も同じ基準で出します。いま毎日データが流れているものだけを「本番稼働中」とし、そうでないものは分けて書きます。この記事の計算に必要なのはPOSレジと勤怠・人事の2つで、社員の給与情報は勤怠・人事の欄から受け取ります。
| 区分 | 連携先 | 状況 |
|---|---|---|
| POSレジ | 東芝テック/スマレジ/USENレジ/NECモバイルPOS/ポスタス(POS+) | 本番稼働中 |
| ローズシステム/寺岡精工/funfo/Chompy(モバイルオーダー) | 本番稼働中 | |
| ステアリテール(FoodFrontia Pro)/グローリー/リブオン(宅配Evolution)/ダイニー | 接続対応中 | |
| 予約・口コミ | TableCheck/Googleビジネスプロフィール/Instagram ※Instagramは一部の企業様で稼働中です |
本番稼働中 |
| トレタ/エビカ | 接続対応中 | |
| 仕入 | インフォマート | 本番稼働中 |
| メニューPlus(レシピ) | 接続対応中 | |
| 勤怠・人事 | ジョブカン/King of Time/タッチオンタイム/SmartHR | 本番稼働中 |
| 外部データ | 気象データ(全国・時間帯別) | 本番稼働中 |
| 上記以外 | ネットワーク未接続の店舗を含む | CSVアップロードで統合対象に含められます |
よくある誤解
「社員のぶんは毎月ほぼ同じ額なので、日次にしても意味がないのでは」
会社全体で見ればそのとおりです。動くのは、店舗別に見たときです。社員は月の中でヘルプに出たり、異動したり、複数店を見たりします。会社の合計が変わらなくても、どの店の費用になるかは日によって動きます。そして人件費率は店舗ごとに見る数字なので、そこが動けば率も動きます。「月額だから一定」というのは、その社員1人の給与についての話であって、店の数字としては一定ではありません。
「給与のデータを預けるのは、社内の合意を取るのが難しそうです」
その懸念は正しいと思います。ですので、社内でも見られる方を限る形にしてあります。給与にあたる情報は、権限を持つ方だけが参照できる扱いで、誰がいつ何件参照したかを記録に残しています。権限を持たない方が触ろうとした場合も、その記録が残ります。画面に出てくるのは店舗別に合算された人件費で、個人ごとの給与額が店長やエリアマネージャーの画面に出ることはありません。
「給与計算そのものを、こちらに置き換えるという話ですか」
違います。給与計算は、これまでどおりお使いのしくみで行っていただきます。こちらがするのは、確定した給与の情報を受け取って、店舗別・日別の費用として並べ直すことだけです。振込にも、明細にも、社会保険の手続きにも関与しません。経営の判断に使う数字を作るためだけの計算だとお考えください。目的が違うので、給与計算の側の数字と1円単位で一致させにいくこともしていません。
料金と、導入までの流れ
TEAL BIの料金は1店舗あたり月額8,000円(税抜)だけです。初期費用・導入費用・連携費用はいただいていません。打刻の実績にもとづく日次の人件費、労働時間の表、シフトとの予実、人件費予算の登録、朝の速報は、この料金に含まれます。オプション料金という考え方をしていません。
一方、この記事の中心である月給者の割り振りは、料金表に載る機能としてご案内できる段階にありません。先行してお使いになりたい場合は、ご一緒に検証する形でご相談ください。時期のお約束はできませんが、いまどこまで動いているかは、そのつど正直にお伝えします。
導入の流れは、いまお使いのPOSレジ・勤怠・労務管理システムの構成をお聞きするところから始まります。すでに接続実績のあるものであれば、やり取りは短く済み、約1週間で稼働を開始できます。掲載していないものが混ざっている場合も多くは連携可能で、その際はメーカー様との打ち合わせのうえ新規の連携開発を行います。期間の目安は1か月程度です。いずれの場合も月額8,000円のままで、連携のための費用はいただきません。
画面と機能をひととおりご覧になりたい場合は、サービス紹介資料(全10ページ)をご請求ください。フォームのご入力後、その場でダウンロードいただけます。
よくあるご質問
Q. 所定労働時間は、どの数字を使うのですか?
契約上の所定時間を、社員ごとに登録していただきます。会社によって、月ごとに決めている場合と、年間の総枠から割り戻している場合があります。どちらでも構いませんが、社内で同じ決め方にそろえてください。ここが人によって違うと、同じ給与額でも1時間あたりの単価が変わり、店舗間の比較ができなくなります。固定残業を設定している方は、そのぶんを所定時間に含めるかどうかも同時に決めます。
Q. 社員が複数の店に入った日は、どちらの店の費用になりますか?
その日の打刻時間の比で、両方に分かれます。A店で6時間、B店で2時間なら6対2です。所属店に全額を寄せる設定にすることもできますが、既定は実際に働いた店に置くほうにしています。ヘルプに出した側の負担が消えると、店舗別の比較が成り立たなくなるためです。1日のうちに店をまたいだ場合も、日をまたぐ勤務の場合も、営業日の区切りは会社の締め時刻の設定に従います。
Q. 給与を月の途中で改定したときは、どうなりますか?
改定日を持たせてありますので、その日から新しい金額で計算します。過去の日付にさかのぼって上書きすることはしません。すでに出ている日次の数字が、あとから静かに書き換わるのを避けるためです。さかのぼって直したい場合は、対象の期間をご指定いただいたうえで作り直します。いつ作り直したかは記録に残ります。
Q. 社員の打刻が無い会社でも使えますか?
そのままでは使えません。この計算は、その日その社員がどの店で何時間働いたかを元にしているので、時間が無いと配る先が決まりません。社員の打刻を運用として始めていただくか、あるいは所属店に全額を寄せる簡易な形から始めるか、の2つになります。後者でも「日次に社員のぶんが乗る」ところまでは進みますが、ヘルプや複数店兼務のぶんは実態と離れます。そこは正直にお伝えしています。
Q. 労務や経理が、新しく入力する作業は増えますか?
増やさない前提で作っています。お願いするのは、給与の情報を月に1度お預けいただくことだけで、日々の割り振りには触っていただきません。すでにお使いの労務管理システムから出力できる形であれば、その出力の項目名をこちら側で読み替えます。労務管理システムの中の設定や運用を変えていただく必要はありません。
Q. 出てきた金額は、決算の人件費と一致しますか?
一致しません。そして、一致させにいっていません。決算の人件費は会計のルールに沿って作る金額で、こちらは店舗運営を日々判断するための金額です。賞与の引当、退職金、月をまたぐ支給のずれなど、目的が違えば扱いも変わります。大事なのは一致することではなく、店舗どうし・月どうしが同じ基準で比べられることだとお考えください。
TEAL BIについて
TEAL BIは、(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けの経営データ統合ダッシュボードです。複数メーカーのPOSレジ・勤怠・仕入の各データを自動連携し、統一フォーマットに変換したうえで、店舗別・日次でFL比率・確定原価率・人件費の着地見込みを可視化します。複数の飲食企業で本番稼働しています。グループ代表自身が20年以上にわたって飲食店経営の現場に携わってきた経験から立ち上げた事業で、現場の経営者が本当に必要とする数字が実装されているのが特徴です。
御社では社員の給与を計算しているのはどこで、社員の打刻は店舗別に取り出せる状態でしょうか。この2つをお聞かせいただければ、いまの構成のまま、社員込みの日次人件費に進めるかどうかを先にお返しします。給与計算を社外にお願いされている場合でも、受け取れる形が用意できることが多いので、そこもあわせて確認いたします。
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人件費:社員とアルバイトを分けて、人件費を積み上げる
執筆:斉田 教継((株)ラックバッググループ / (株)ティールテクノロジーズ 代表取締役)
20年以上にわたり飲食企業の経営に携わる。(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けデータ統合ダッシュボード「TEAL BI」の事業を主導する。一般社団法人オープン・フードサービス・システム・コンソーシアム データ標準化分科会長として、業界共通POS標準フォーマット基盤の構築を主導。




