「新しく開けた店を抜いたら、どうなの」に答えられますか|既存店だけを、開店日マスタを使わずに選び出す

「新しく開けた店を抜いたら、どうなの」に答えられますか|既存店だけを、開店日マスタを使わずに選び出す

月初の会議で「先月は前年を超えました」と報告したあと、たいてい同じ質問が返ってきます。「新しく開けた店を抜いたら、どうなの」です。ここで即答できる会社は、あまり多くありません。多くの場合、その場は「あとで出します」で終わり、担当者が店舗マスタと売上のエクセルを突き合わせて、翌週に別の資料として出てきます。

この作業がやっかいなのは、正解が1つに決まらないことです。去年の途中で開けた店を今年の既存店に入れるのか、閉めた店の前年の売上を前年側から抜くのか、改装で1か月休んだ店をどちらに数えるのか。決め方を変えれば結論の向きまで変わるのに、その決め方は資料のどこにも書かれていません。TEAL BIでは、この線の引き方を製品側で1つに決めて、毎朝の画面に固定で出しています。この記事は、その線をどこに引いたかについてです。

前年比が測っているのは、店の力ではなく店の数かもしれません

全社の売上を単純に足して前年と比べると、その差には2つのものが混ざります。1つは、去年からある店が強くなったか弱くなったか。もう1つは、店が増えたか減ったかです。この2つは打ち手がまったく違うのに、合計の前年比では見分けがつきません。

出店が続いている会社では、合計の前年比はほぼ必ずプラスになります。新しい店の売上が、まるごと今年側にだけ足されるからです。逆に、去年閉めた店の売上は前年側にだけ残ります。既存店が2%落ちていても、新店が3店あれば合計は前年超えになり、報告としては何も問題が無いように見えます。翌月も同じことが起き、既存店が落ち続けていることに気づくのは、出店が止まった年です。

合計の前年比が悪い指標だという話ではありません。会社の規模が前年からどう変わったかは、合計でしか測れません。困るのは、その1本しか無いことです。

同じ月の売上を、どの店で比べるか

全店を単純に合計する

増えたのか、伸びたのかが混ざる

  • 今年開けた店が、今年側にだけ足される
  • 去年閉めた店が、前年側にだけ残る
  • 改装で休んだ月が、そのまま差になる
  • 既存店が落ちていても、合計は前年超え
3年とも営業した店だけで比べる

残るのは、店そのものの増減だけ

  • 比べる3つの月に、同じ店だけが並ぶ
  • 出店・閉店の影響が入らない
  • 何店で比べたかが、その場に出る
  • 合計の線とは別のカードで並ぶ

どちらかが正しいのではなく、答えている問いが違います。

図1:全店の合計と、3年とも営業した店だけ。同じ月でも、比べる母集団を変えると別の問いに答えることになる。

開店日・閉店日のマスタは、判定に使っていません

この手の集計は、ふつう店舗マスタの開店日と閉店日で判定します。TEAL BIはその方法を採っていません。開店日や閉店日は、登録されていない会社のほうが多いからです。

理由ははっきりしていて、この2つは日々の業務で使わない項目です。店を開けるときに本部が入力しなければならない場所が別にいくつもあり、BIの店舗マスタは後回しになります。閉店にいたっては、閉めたあとで誰かが遡って入れる作業になるので、なおさら残りません。登録されているかどうかで結果が変わる項目を判定に使うと、「うちだけ既存店の店数がおかしい」という状態が起きます。そしてその原因は、画面を見ても分かりません。

代わりに使っているのは、実際に売上が立っているかどうかだけです。売上は毎日入ってくるもので、誰かが入力を忘れることがありません。

残すのは「3年とも、その月を丸々営業した店」です

既存店として残す条件は2つです。1つ目は、その店の最初の売上日が、2年前の同じ月の1日以前であること。いちばん古い比較月の初日にはもう営業していた、ということです。これで、月の途中に開けた店がその月から混ざるのを防ぎます。

2つ目は、当年・前年・2年前の3つの月それぞれに、売上があること。どれか1つの月がまるごと0であれば、その店は既存店に入りません。閉店した店、その月ずっと休業していた店は、これで自動的に落ちます。

2年前まで見ているのは、グラフに2年前の線も重ねているからです。3本の線が、それぞれ違う店の集まりで描かれていたら、比べる意味がありません。3本とも同じ店の集まりで描くために、いちばん古い月を基準に条件を決めています。

既存店が決まるまでに、通っている2つの門

画面の絞り込み
権限で見える店
エリア・業態
2つの条件で残す初売上日が2年前の月初以前/3つの月すべてに売上がある
残った店だけで描く
  • 当年・前年・2年前の累積
  • 対象が何店かを併記
  • 合計の線とは別のカード

絞り込みが先で、既存店の判定はそのあとです。順番が逆ではありません。

図2:既存店が決まるまでの順番。見える範囲を決めてから、その中で3年ぶんの条件を当てる。

何店が残ったのかを、グラフの下に出します

既存店の集計でいちばん危ないのは、何店で計算したのかが分からないまま、率だけが独り歩きすることです。去年は120店で出した数字、今年は96店で出した数字、と気づかずに並べてしまうことが起こります。

そのため、グラフの下に対象の店数をそのまま出しています。「各月を丸々営業した店のみで比較(月途中オープンの月・閉店/休業店は除外)。対象◯店。」という一文です。店数が思っていたより少なければ、そこで気づけます。全店が80店で既存店が45店なら、この会社は直近2年でかなり動いた、ということが1行で読めます。

全店の線と、既存店の線を、別々のカードとして並べています

速報の画面には、当月の累積カーブが2つ並びます。片方は、絞り込んだ範囲の全店の累積で、当年・前年・予算の3本。もう片方が既存店で、当年・前年・2年前の3本です。予算の線は全店側にあります。予算は店ごとに登録するもので、新店にも入っているためです。

この2枚を並べる理由は、片方だけでは判断できないからです。全店の線が予算に届いているかは、会社としての着地の話。既存店の線が前年に届いているかは、いまある店が強くなっているかの話です。どちらも見て初めて、来月何をするかが決まります。前者だけを見ていると出店で穴を埋め続けることになり、後者だけを見ていると会社の実際の着地が分かりません。

前年の「相手の日」を、暦日で合わせるか曜日で合わせるかは設定です

累積カーブを重ねるとき、去年の同じ日をどう決めるかで数字が変わります。暦の同じ日(8月1日と前年の8月1日)で合わせるか、同じ曜日(金曜と前年の金曜=364日前)で合わせるかです。週末に売上が偏る飲食では、この差が無視できません。暦日で合わせると、土日の数が違う月どうしを重ねることになります。

ここは設定画面でグラフの種別ごとに選べるようにしてあり、既定は暦日合わせです。曜日合わせを選ぶと、前年は364日前、2年前は728日前の窓に置き換わります。ただし、既存店かどうかの判定だけは、設定にかかわらず暦月のままです。あれは「その月を丸々営業したか」を見る門なので、曜日でずらすと月の端が欠けて、判定そのものが揺れてしまいます。線の重ね方と、母集団の決め方は分けてあります。

週の区切りと前年の合わせ方の考え方そのものは、週次で見るときの記事で詳しく書いています。

このグラフは暦月で切ります。締め日は使いません

TEAL BIには、締め日を設定して「月度」で集計する仕組みがあります。ただし、この累積グラフと既存店の判定は、締め日を設定していても暦月で切ります。1日から月末までです。

あらかじめ書いておくのは、締め日が20日の会社で、このグラフと人件費や仕入の月次を突き合わせると必ず食い違うからです。食い違うこと自体は仕様で、どちらかが壊れているわけではありません。指標ごとにどちらの軸で切っているかは、画面の指標名の横から確認できます。その中身については計算式とデータ元の記事に書きました。

担当している店だけを見ている人には、その中の既存店が出ます

既存店の判定は、その人に見えている店の中で行われます。順番は、権限と絞り込みで範囲を決めるのが先、既存店の条件を当てるのがあとです。本部の方が全店で開けば全社の既存店、エリアマネージャーが開けば担当している4〜5店のうちの既存店になります。

この順番には意味があります。担当の店に新店が1つ入っているとき、その人が見るべきなのは「自分の担当のうち、去年から比較できる店がどうなっているか」です。全社の既存店の平均ではありません。エリアや業態で絞り込んだ場合も同じで、絞り込んだ結果の中で3年ぶんの条件を当て直します。

出しているのは3本の線で、前年比の%ではありません

正直に書いておきます。既存店比較のカードが出しているのは、当年・前年・2年前の累積カーブを重ねた3本の線で、「既存店前年比 102.3%」のような1つの数字ではありません。線の開き方を目で読む形になっています。

もう1つ、当年の線は基準日で止まります。前年と2年前は月末まで引かれているので、線の長さは揃いません。読むときは同じ日の位置どうしを比べてください。月末どうしを比べているわけではないので、「まだ前年に届いていない」と月の途中で判断すると外します。

この2つは、いまの形の限界です。時期をお約束できる段階ではありませんが、%で出すべきだという認識は持っています。現時点でどこまでが使えるかを、そのまま書いています。

よくある誤解

「既存店くらい、エクセルで店を抜けば出せます」

出せます。実際、多くの会社がそうしています。問題は毎月やることと、抜く店のリストを誰が更新するかです。去年の途中で開けた店は、今年のいつから既存店に入るのか。その判断を毎月手で入れていると、担当者が変わった月に必ずずれます。そして過去に作った資料を作り直すことは、まずありません。手で抜けること自体は事実ですが、抜き方が去年と同じである保証はどこにもありません。製品側で決めているのは、その保証のほうです。

「うちは出店が止まっているので、全店と既存店は同じです」

出店が止まっていても、2つは一致しないことがあります。効いてくるのは閉店と、長期の休業です。去年1店閉めていれば、前年側にだけその店の売上が残ります。改装で1か月まるごと閉めた店があれば、その店はその年の既存店から外れます。出店が止まっている会社ほど、合計の前年比がじりじり下がって見えることがあり、その差の大半が閉店ぶんだった、ということが起こります。2つの線が重なっているなら、それは「重なっている」という事実が分かった状態です。見なくてよいのとは違います。

「2年前まで遡らなくても、前年と比べれば足ります」

前年だけで足りる年もあります。足りなくなるのは、前年そのものが異常だった年です。臨時休業があった月、近隣の工事や大型イベントがあった月と比べると、今年が良く見えたり悪く見えたりします。2年前の線が重なっていると、前年の落ち込みが単年の事情だったのか、続いている傾向なのかが1枚で分かります。ただし2年前を条件に入れるぶん、既存店の対象は少なくなります。これは引き換えです。

実際に本番稼働している連携先

既存店の判定は、店舗マスタではなく実際の売上で行っています。つまり、この線が引けるかどうかは、売上データがどこまで手元にあるかで決まります。だからここでも、いま毎日データが流れているものだけを「本番稼働中」として出します。

区分 連携先 状況
POSレジ 東芝テック/スマレジ/USENレジ/NECモバイルPOS/ポスタス(POS+) 本番稼働中
ローズシステム/寺岡精工/funfo/Chompy(モバイルオーダー) 本番稼働中
ステアリテール(FoodFrontia Pro)/グローリー/リブオン(宅配Evolution)/ダイニー 接続対応中
仕入 インフォマート 本番稼働中
メニューPlus(レシピ) 接続対応中
勤怠・人事 ジョブカン/King of Time/タッチオンタイム/SmartHR 本番稼働中
予約・口コミ Googleビジネスプロフィール/TableCheck/Instagram
※Instagramは一部の企業様で稼働中です
本番稼働中
外部データ 気象データ(全国・時間帯別) 本番稼働中
上記以外 ネットワーク未接続の店舗を含む CSVアップロードで統合対象に含められます

連携を始めた日より前の売上は、遡って取り込むことができます。2年前の月の売上が入っていない店は、その時点では既存店に入りません。過去分を取り込めば、その月から既存店として並びます。何年ぶん残っているかはメーカーによって違うので、そこを先に確かめるところから始めます。この話は過去データの記事にまとめてあります。

料金と、導入までの流れ

TEAL BIの料金は1店舗あたり月額8,000円(税抜)だけです。初期費用・導入費用・連携費用はいただいていません。既存店の比較も、この料金の範囲でお使いいただけます。オプション料金という考え方をしていません。

導入は、いまお使いのPOSレジと勤怠システムの構成をお聞きするところから始まります。すでに接続実績のあるものであれば、やり取りは短く済み、約1週間で稼働を開始できます。掲載していないものが混ざっている場合も多くは連携可能で、その際はメーカー様との打ち合わせのうえ新規の連携開発を行います。期間の目安は1か月程度です。いずれの場合も月額8,000円のままで、連携のための費用はいただきません。

いまお使いいただける範囲の画面と機能をひととおりご覧になりたい場合は、サービス紹介資料(全10ページ)をご請求ください。フォームのご入力後、その場でダウンロードいただけます。

よくあるご質問

Q. どの店を既存店にするか、こちらで指定できますか?

いまのところ指定はできません。実際の売上から機械的に決まります。指定できるようにすると、決めた人しか基準を知らない状態に戻ってしまうためです。ただし、画面のエリア・業態の絞り込みは先に効きます。特定の業態だけで既存店を見たい、という形であれば絞り込みで実現できます。

Q. 改装で2週間ほど閉めた店は、どう扱われますか?

既存店に残ります。判定はその月に売上があったかどうかで行っているので、月の一部でも営業していれば対象です。そのぶん、その店の当年の売上は実態より低く出ます。まるごと1か月閉めた場合は売上が0になるので、その年は既存店から外れます。「丸々営業した」という言葉どおりに日数まで見ているわけではない、というのが正確なところです。改装が重なった月は、店数と合わせて確認してください。

Q. 導入したばかりで、2年前のデータがありません

その場合、既存店の対象は0店になり、線が引かれません。3つの月すべてに売上があることを条件にしているためです。POSレジ側にデータが残っていれば遡って取り込めますので、まず何年ぶん残っているかを確認するところから始めます。取り込みの費用はいただいていません。前年ぶんだけがある状態でも、全店の累積カーブのほうは前年との比較が出ます。

Q. 業態を変えた店や、移転した店はどうなりますか?

売上が続いていれば、既存店として残ります。業態転換や移転を判定に入れていないためです。同じ店舗として登録され、売上が3つの月とも立っていれば条件を満たします。移転で数週間閉めた場合も、その月に売上があれば残ります。数字が大きく動いた店の心当たりがある場合は、店舗別の画面で個別に確認してください。既存店の線は全体の傾向を見るためのもので、店ごとの事情を吸収する仕組みは持っていません。

Q. 既存店の前年比を、パーセントで見ることはできますか?

この画面では出していません。当年・前年・2年前の累積カーブを重ねた3本の線で、線の開き方を読む形です。数字が必要な場合は、グラフの各時点の金額から手で計算していただくことになります。%で出すべきだという認識は持っていますが、時期をお約束できる段階ではありません。現状をそのままお伝えしています。

Q. 締め日を設定していますが、既存店の比較も月度で切られますか?

いいえ、このグラフは暦月です。1日から月末までで切ります。締め日を設定している会社では、人件費や仕入の月次とは期間がずれます。仕様としてそうしているので、突き合わせて合わないこと自体は異常ではありません。どの指標がどちらの軸で切っているかは、画面の指標名の横から確認できます。

Q. 予算の線も、既存店だけで見られますか?

予算は全店の累積カーブのほうに出ます。既存店のカードは当年・前年・2年前で、予算の線は入りません。予算は店舗ごとに登録するもので新店にも入っているため、既存店だけを抜き出した予算は「会社が立てた予算」とは別のものになるからです。予算に対する着地は全店の線で、店そのものの増減は既存店の線で見る、という使い分けになります。

TEAL BIについて

TEAL BIは、(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けの経営データ統合ダッシュボードです。複数メーカーのPOSレジ・勤怠・仕入の各データを自動連携し、統一フォーマットに変換したうえで、店舗別・日次でFL比率・確定原価率・人件費の着地見込みを可視化します。複数の飲食企業で本番稼働しています。グループ代表自身が20年以上にわたって飲食店経営の現場に携わってきた経験から立ち上げた事業で、現場の経営者が本当に必要とする数字が実装されているのが特徴です。

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執筆:斉田 教継((株)ラックバッググループ / (株)ティールテクノロジーズ 代表取締役) 20年以上にわたり飲食企業の経営に携わる。(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けデータ統合ダッシュボード「TEAL BI」の事業を主導する。一般社団法人オープン・フードサービス・システム・コンソーシアム データ標準化分科会長として、業界共通POS標準フォーマット基盤の構築を主導。

投稿者プロフィール

斉田 教継株式会社ラックバッググループ 株式会社ティールテクノロジーズ 代表取締役
斉田 教継(さいだ のりつぐ)
株式会社ティールテクノロジーズ 代表取締役
株式会社ラックバッググループ 代表取締役
20年以上にわたり飲食企業の経営に携わる。現在は飲食企業向けデータ統合ダッシュボード「TEAL BI」を運営する。一般社団法人オープン・フードサービス・システム・コンソーシアム データ標準化分科会長として、業界共通POS標準フォーマット基盤の構築を主導。