【結論】
人件費率が上がった理由を説明できないのは、担当者の分析力が足りないからではありません。人件費は「労働時間 × 単価」の掛け算で、金額という一つの数字の中で、時間の問題と単価の問題が打ち消し合うからです。前日のシフト時間と、前日の実打刻時間を並べる。それだけで、超過した店舗・曜日・時間帯が、その日のうちに分かります。
【この記事でわかること】
・なぜ人件費率を毎月見ていても、上がった原因までは分からないのか
・シフトと実打刻のズレを、月末ではなく翌朝に見つける方法
・店舗別・曜日別・時間帯別に、実際には何がどこまで見えるのか
・いまの勤怠システムを止めずに始める方法と、その唯一の条件
・料金と、導入までにかかる期間
先月の人件費率、なぜ上がったのか説明できましたか
人件費率の理由を、記憶で探していませんか
月次の金額を見てから聞き回る
- 試算表で人件費率の上昇を知る
- エリアマネージャーと店長に理由を聞く
- 時間の超過と単価の影響は分かれない
前日の時間差を翌朝に見る
- シフト時間と実打刻時間を並べる
- 外れた店舗から曜日・時間帯へ下りる
- 説明できない超過を月末前に見つける
金額は結果です。先に労働時間の予実を見ると、原因を探す場所が決まります。
翌月の10日ごろ、試算表が出ます。人件費率が先月より2ポイント上がっている。役員に理由を聞かれて、エリアマネージャーに聞いて、店長に聞いて、返ってくる答えはだいたい同じです。「イベントが重なったので」「新人が入って教育に時間がかかったので」「人が足りずヘルプを回したので」。
どれも本当のことです。ただし、そのうちのどれが何時間ぶんだったのかは、誰も言えません。1か月前の記憶をたどって原因を探しているからです。そして翌月も、同じ会話をします。
このとき見ているのは金額です。金額は結果であって、原因ではありません。
金額で見ているかぎり、原因の手前で止まる
金額の手前にある二要因を分ける
結果は見える
- 人件費率が上がった
- 時間と単価のどちらが原因かは分からない
予定と実績を比べる
- シフト時間
- 実打刻時間
- 店舗・曜日・時間帯の差
最後に掛ける
- 基本の単価
- 残業や深夜の割増
- 時間とは別の変動として見る
金額での管理は残したまま、労働時間と単価を分けて持つと、率が動いた理由まで説明できます。
理由は単純で、人件費は「労働時間 × 単価」の掛け算だからです。
労働時間が11%増えていても、その月にたまたま高時給のベテランのシフトが少なければ、金額はそれほど動きません。逆に時間が適正でも、社員の残業単価や深夜割増が乗れば金額は膨らみます。一つの数字の中で、時間の問題と単価の問題が打ち消し合ってしまう。だから「なぜ上がったのか」に到達できないのです。
ですから、人件費はまず時間で持つべきだと考えています。時間で持てば「シフト何時間に対して、実績は何時間だったか」という予実がそのまま出ます。単価は最後に掛ければいい。金額での管理をやめる必要はありません。両方を持つのが正解です。
実際にあった数字です。ある店舗の前日のシフト時間は69.5時間。ところが実打刻の合計は77.25時間でした。差は7.75時間です。金額に直せば1万数千円で、月次の人件費率にはほとんど現れません。しかし同じことが毎日続けば、1店舗だけで月200時間を超える計算になります。
そしてこのズレは、どこでも同じ場所で生まれます。打刻忘れ、休憩打刻の未実施、早出と居残り、当日の応援・ヘルプ勤務、事後の修正申請——この5つです。それぞれがどう発生し、どう塞ぐかは別の記事にまとめました。飲食店の人件費が合わない原因:シフトと実打刻のズレを生む5つの穴をご覧ください。
「月末に分かる」では、打つ手がもう残っていない
超過に気づくのは翌朝
予定と実績が記録される
シフトは予定、打刻は実績として、いまの勤怠システムに残ります
前日ぶんを自動で取得
シフト時間と実打刻時間を同じ店舗・営業日にそろえます
時間の差が並ぶ
外れた店舗を見つけ、曜日・時間帯へ下りて原因を確認できます
当日途中の数字ではなく、前営業日までを確定した状態でそろえます。
月末の人件費率を待たず、説明できない超過が続く店舗へその日のうちに確認できます。
人件費率が確定するのは翌月の10日前後です。そのころには、対象の月はとっくに終わっています。分かったときには、手を打てる期間が過ぎている。これが、月次で人件費を管理することの本当の弱点です。
日次で持っていると、話が変わります。今朝の時点で、昨日のシフトと実績の差が出ています。乖離が大きい店には、今日のうちに連絡できます。原因が「イベントで必要だった残業」なら、それは正しい超過です。記録して、そのまま。問題は、説明できない超過が続く店舗のほうです。そこは、月末を待たずに見つかります。
予算を登録しておけば、当月の人件費の着地見込みも日次で更新されます。月の後半に入る前に気づけるので、シフトの組み直しがまだ間に合います。
何が、どこまで分かれて見えるのか
店舗別──外れている店を、全店の中から見つける
全店を一覧にして、シフト時間に対する実績の乖離率で並べます。運用上の目安として、10%以上の超過が出ている店舗を確認対象にしています。この水準を超えたら、その店に何があったのかを聞きに行く。責めるためではなく、原因を特定するためです。
曜日別・時間帯別──同じ「10%超過」でも、中身が違う
外れている店が見つかったら、次はその店を曜日と時間帯で割ります。金曜の夜だけ超過しているのか、平日の開店前だけ超過しているのかで、打ち手はまったく違います。前者ならシフトの人数設計の問題、後者なら開店準備の作業設計か、早出打刻の運用の問題です。
ここを分けずに「人件費を締めろ」と言うと、必要な人員まで削って売上を落とします。店舗別の数字だけで指示を出すと、たいていこうなります。
予算との予実──当月の着地見込みまで、同じ画面に
売上・仕入・人件費の予算値を登録すると、日次の予実と当月の着地見込みが自動で表示されます。前年・2年前との対比も同じ画面に並びます。
これらはいずれも、担当者が集計を実行する操作を必要としません。前日ぶんのシフトと打刻を夜間に自動で取得し、翌朝の出社時点で表示された状態になっています。
いまの勤怠システムは、そのままで構いません
TEAL BIは勤怠システムを置き換えるものではありません。いま使っているものからシフトと打刻のデータを受け取り、POSレジの売上と同じ画面に並べます。ジョブカン/King of Time/タッチオンタイムは接続実績があります。掲載していないシステムでも多くの場合は連携可能で、その際はメーカー様との打ち合わせのうえ新規の連携開発を行います。
ひとつだけ、最初に確認していただきたい条件があります。予実になるには、実績(打刻)だけでなく、シフト(予定)側のデータも取り出せる必要があります。片方しか取れないと、実績の集計にはなっても予実にはなりません。ご検討の際は、ここを最初にご確認ください。
よくある誤解
労働時間管理の三つの誤解
勤怠システムがあれば、労働時間は十分に見えています
実績だけでなく、シフトとの予実を店舗・曜日・時間帯別に追う必要があります
人件費率を毎月見ていれば、管理できています
率は結果です。時間と単価を分けると、動いた理由まで説明できます
時間の管理は店長に任せれば足ります
本部やエリアマネージャーには、担当店舗を同じ基準で横に並べる手段が要ります
「勤怠システムを入れているので、労働時間は見えています」
見えているのは実績です。多くの勤怠システムは、締めたあとの月次集計表を出すことを目的に作られています。シフト(予定)と実績を並べて、店舗別・曜日別・時間帯別に、日次で追いかける画面までは持っていないことがほとんどです。
加えて、勤怠は勤怠、POSはPOSで画面が分かれています。その日の売上に対して、その日の労働時間が適正だったのか——この問いに答えようとした瞬間、結局どこかで人が突き合わせることになります。
「人件費率は毎月見ているので、管理はできています」
人件費率は結果です。上がったことは分かりますが、上がった理由は書いてありません。時間と単価が同じ数字の中に入っているかぎり、率を眺めても分解できません。
率を見るのをやめる必要はありません。時間で持つと、率が動いた理由まで説明できるようになる、という話です。
「時間の管理は、店長に任せています」
店長に見えているのは、自分の店だけです。エリアマネージャーが4〜5店を担当していると、どの店が外れているのかを横に並べる手段が要ります。それが無いと、訪問した店の印象と、店長の報告の巧拙で判断することになります。
これは店長の力量差の話ではありません。全店を同じ基準で並べられるかどうかの話です。「あの店はきつそうだ」という感覚を、記録に置き換えるということでもあります。誰が、いつ、どれだけ無理をしているのか。人が採れない時代に、これは経営にとって決定的な情報になります。
料金と、導入までの流れ
TEAL BIの料金は1店舗あたり月額8,000円(税抜)だけです。初期費用・導入費用・連携費用はいただいていません。この記事で挙げた人件費の予実も、売上の日次集計も、すべてこの中に含まれます。詳細は料金ページをご覧ください。
導入の流れは、いま使っている勤怠システムとPOSレジの構成をお聞きするところから始まります。すでに連携実績のあるものであれば、やり取りは短く済みます。掲載していないものでも多くの場合は連携可能で、その際はメーカー様との打ち合わせのうえ新規の連携開発を行います。期間の目安は1か月程度です。いずれの場合も月額8,000円のままで、連携のための費用はいただきません。
いま使っている勤怠システムも、売上管理の仕組みも、止める必要はありません。並行して動かしたまま、数字が一致することを確認してから切り替える——実際、ほとんどの企業がこの順序で進めています。
お使いの勤怠システムとPOSレジをお選びいただければ、接続の可否をその場でお答えします。
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機能と画面をひととおりご覧になりたい場合は、サービス紹介資料(全10ページ)をご請求ください。フォームのご入力後、その場でダウンロードいただけます。
よくあるご質問
Q. 勤怠システムは何に対応していますか?
ジョブカン、King of Time、タッチオンタイムに接続実績があります。掲載していないシステムでも多くの場合は連携可能で、その際はメーカー様との打ち合わせのうえ新規の連携開発を行います。連携のための費用はいただきません。
Q. いま使っている勤怠システムやPOSレジを止める必要はありますか?
ありません。並行して運用し、数字が一致することを確認してから移行していただけます。勤怠システムの入れ替えも、POSレジの入れ替えも必要ありません。
Q. シフトはエクセルで組んでいますが、予実は見られますか?
予実にするには、実績(打刻)に加えて、シフト(予定)側のデータを取り出せることが条件になります。勤怠システムにシフトを登録して運用されていれば取得できます。エクセルだけで組んでいる場合は、取り込みの方法を個別にご相談ください。
Q. どの単位まで分けて見られますか?
店舗別・曜日別・時間帯別に、日次で見られます。個人別まで下ろすこともできます。実務としては、店舗別で外れている店を見つけ、曜日と時間帯で絞り、必要なら個人まで下ろす、という順で使うのが有効です。
Q. ズレは何%から見ればよいですか?
一律の正解はありませんが、運用の目安として10%以上の超過が出た店舗を確認対象にしています。大事なのは基準値そのものより、超過したときに「何があったのか」を必ず聞きに行く運用が回ることです。原因が説明できる超過は問題ありません。
Q. エリアマネージャーには担当店舗だけを見せられますか?
「自店舗」の画面では、その方の担当店舗だけが並びます。役職や担当範囲に応じた見せ分けができ、そのことで料金が変わることはありません。
Q. 人件費の着地見込みも出ますか?
出ます。売上・仕入・人件費の予算値を登録すると、日次の予実と当月の着地見込みが自動で表示されます。前年・2年前との対比も同じ画面に並びます。
TEAL BIについて
TEAL BIは、(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けの経営データ統合ダッシュボードです。複数メーカーのPOSレジ・勤怠・仕入の各データを自動連携し、統一フォーマットに変換したうえで、店舗別・日次でFL比率・確定原価率・人件費の着地見込みを可視化します。本記事で挙げた「シフト時間と実打刻時間の予実」も標準機能として日次で表示され、店舗別・曜日別・時間帯別に乖離を追跡できます。グループ代表自身が20年以上にわたって飲食店経営の現場に携わってきた経験から立ち上げた事業で、現場の経営者が本当に必要とする数字が実装されているのが特徴です。
いま人件費をどの単位で見ているか、勤怠システムとPOSレジは何をお使いか——その2つをお聞かせいただければ、導入までの流れと期間の目安をお伝えします。
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労働時間・人件費の着地見込み:シフトを取り込んで、月末の労働時間が出る
全自動シフト作成:売上予算とAIの売上予測から、シフトが自動で組み上がる
執筆:斉田 教継((株)ラックバッググループ / (株)ティールテクノロジーズ 代表取締役)
20年以上にわたり飲食企業の経営に携わる。(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けデータ統合ダッシュボード「TEAL BI」の事業を主導する。一般社団法人オープン・フードサービス・システム・コンソーシアム データ標準化分科会長として、業界共通POS標準フォーマット基盤の構築を主導。




