【結論】
店長は「人が足りません」と言い、本部は「人件費が高い」と言います。どちらも本当のことなのに、話が噛み合いません。人件費率は金額の話で、足りる・足りないは時間の話だからです。TEAL BIには、売上を労働時間で割った「1人時間あたり、いくら売れたか」という列があります。この式のどこにも時給が入っていないので、時給が上がっても、この数字は動きません。動くのは、売れ方か、人の使い方が変わったときだけです。POSレジの売上と、勤怠の労働時間を、同じ店舗・同じ営業日でそろえていないと作れない数字で、製品の中の説明にも「勤怠連携があって初めて出る」と書いてあります。
【この記事でわかること】
・「人が足りない」と「人件費が高い」が、社内で噛み合わなくなる理由
・時給が上がったぶんと、人の使い方が変わったぶんを、分けて読む方法
・売上が動いた月に、増やすべきか絞るべきかを決める読み方
・打刻の実績・シフトの予定と同じ行に置く意味と、朝の速報での使い方
・料金と、実際に本番稼働している連携先の一覧
「人が足りません」と「人件費が高い」は、同じ店の話です
噛み合わないのは、片方が金額で、片方が時間だから
本部は金額、店舗は時間で話している
- 本部の資料に並ぶのは人件費と率
- 店舗が困っているのは人の数と時間
- 同じ会議で、別々の話をしている
時間あたりの売上を、同じ表に置く
- 売上 ÷ 労働時間が列として並ぶ
- 時給が上がっても動かない数字
- 増やす・絞るの判断が同じ土俵に乗る
どちらかが間違っているのではなく、突き合わせるための共通の数字が無いだけです。
月次の会議で、ある店の人件費率が高いという話になります。本部から「少し締めてください」と伝えると、店長は「これ以上減らすと回りません」と答えます。エリアマネージャーはどちらの言い分も分かるので、その場は「様子を見ましょう」で終わります。翌月も、同じ会話をします。
この会話が終わらないのは、意見が食い違っているからではありません。本部が見ているのは金額で、店舗が困っているのは時間だからです。人件費率が2ポイント上がったという事実からは、人が何時間多かったのかは出てきません。逆に「土曜のディナーが2人では回らない」という実感からは、それが金額にしていくらなのかが出てきません。
突き合わせるには、金額と時間の両方に触れている数字が要ります。それが「1人時間あたり、いくら売れたか」です。
人件費率は、時給が上がっただけでも悪くなります
人件費は労働時間 × 単価です。ですから人件費率は、時間が増えても、単価が上がっても、同じように悪化します。この2つは、率という1つの数字の中では区別が付きません。
そして単価のほうは、店舗の努力と関係なく上がっていきます。最低賃金の改定、募集時給の相場、社員の残業や深夜の割増。どれも店長が決められるものではありません。それでも率は悪化するので、資料の上では「その店が悪くなった」ように見えます。現場が何ひとつ変えていない月でも、そう見えます。
この状態で「率を下げてください」と言うと、店長に残る打ち手は1つだけです。人を減らすことです。単価は動かせないので、時間を削るしかない。そして削りすぎれば売上が落ち、翌月の率はまた悪くなります。率だけを渡すと、この往復に入ります。
率を見るのをやめる必要はありません。単価が入っていない数字を、隣に1列足すだけで、会話が変わります。
1人時間あたり、いくら売れたか、を列にしています
TEAL BIでは、この数字を人時売上と呼んでいます。画面によっては「人時売上高」と表示されます。定義はそのままです。
人時売上 = 売上 ÷ 労働時間
製品の中の用語説明には、こう書いてあります。
1人時間あたりいくら売れたか。シフトの厚さが売上に見合っているかを見る指標です。
大事なのは、この式のどこにも時給が入っていないことです。時給が10%上がっても、人時売上は1円も動きません。動くのは、売れ方が変わったか、人の使い方が変わったかのどちらかが起きたときだけです。
ですから、率が悪化した月にこの列を横に見れば、原因の方向が決まります。人時売上が横ばいなら、悪くなったのは単価の側です。その店の使い方は変わっていません。人時売上まで落ちているなら、使い方の側で何かが起きています。そこから先は、曜日や時間帯へ下りる話になります。
売上が動いた月に、増やすのか絞るのかが決まります
同じ「売上が伸びた月」でも、次の一手は逆になる
売上と人件費を、別々に見ている
- 売上が伸びても、増員の根拠が無い
- 売上が落ちた月は、一律に「締めろ」
- 結果、いつも後から帳尻を合わせる
売上の動きと、時間あたりの売上を並べる
- 伸びた売上を、いまの時間でさばけたか
- 落ちた売上に合わせて、絞れているか
- 絞る根拠にも、増やす根拠にもなる
売上が伸びた月に人を増やしてよいかどうかは、売上の額ではなく、時間あたりの売上が伸びたかどうかで決まります。
この列がいちばん効くのは、売上が動いた月です。売上の増減だけでは、人を増やしてよいのか、絞るべきなのかが決まりません。人時売上と組み合わせると、4通りに分かれます。
| 人時売上が上がった | 人時売上が横ばい・下がった | |
|---|---|---|
| 売上が上がった | 増えた売上を、いまの時間でさばけています。人を増やす余地があります | 増やした時間が、売上になっていません。増やし方を見直します |
| 売上が下がった | 落ちたぶん、時間を絞れています。これ以上は削らないほうがよい状態です | 売上だけが落ちて、時間が残っています。ここが本来の「締める」対象です |
この4つのうち、本来の「人件費を締める」対象は右下の1マスだけです。ところが率だけで見ると、左下も右下も同じように悪く見えます。左下は、店長がきちんと絞った結果として率が悪化している状態です。ここに「締めてください」と言えば、次に削られるのは削ってはいけない時間になります。
左上も、同じくらい見落とされます。売上が伸びていて、時間あたりの売上も伸びている店は、いまの人数で無理をして回している可能性があります。率の上では優秀な店なので、本部からは何も言われません。人を増やす判断が、いちばん遅れる場所です。
この数字は、POSレジだけでは作れません
製品の中の説明には、この指標にだけ注意書きが付いています。
POSだけでは出せません。勤怠連携があって初めて出る数字です。
理由は単純で、分子と分母が別のシステムにあるからです。売上はPOSレジにあり、労働時間は勤怠システムにあります。割り算をするには、同じ店舗・同じ営業日の粒度でそろえる必要があります。店舗コードの対応、営業日の締め時刻、日をまたいだ勤務の扱い——そこを合わせる仕事が、どちらの製品の中にもありません。
だからPOSレジの管理画面には、売上と客単価はあっても、この列はありません。勤怠システムの集計表にも、労働時間はあっても売上はありません。「毎月エクセルで突き合わせている」というお話をよく伺うのは、そのためです。
TEAL BIは、その接続を先に済ませています。勤怠側はジョブカン/KING OF TIME/タッチオンタイムに接続実績があります。勤怠をつないでいない期間・店舗では、この列は出ません。売上だけあっても、割る相手が無いからです。
率の平均ではなく、合計どうしで割り直しています
こまかい点ですが、複数の店舗や複数の日をまとめて見るときに効きます。
全店の人時売上を出すとき、各店の人時売上を平均してはいません。その範囲の売上の合計を、その範囲の労働時間の合計で割り直しています。平均を取ると、売上規模の小さい店が大きい店と同じ重みで効いてしまい、全店の数字が実態からずれるためです。累積の列も同じで、日ごとの人時売上を足したものではなく、月のはじめからの売上合計を、月のはじめからの労働時間合計で割ったものです。
同じ理由で、労働時間が0だった日や店舗は、空欄になります。0円とは出しません。勤怠がまだつながっていない期間も同じです。「割れないものを、割れたことにしない」という扱いに揃えてあります。
日別と累積が、同じ行に並びます
この列が置いてあるのは、労働時間の表です。店舗ごと・営業日ごとに1行が並び、その行の中に、打刻の実績・シフトの予定・そして人時売上が入っています。時間の話と、時間あたりの売上の話が、同じ行にあるという並びです。
| 同じ行に並んでいるもの | その日ぶん | 月のはじめからの累積 |
|---|---|---|
| 労働時間(打刻の実績) | あり | あり |
| 労働時間(シフトの予定) | あり | あり |
| 人時売上(売上 ÷ 労働時間) | あり | あり |
人件費の金額そのものは、この表には出しません。金額は隣の表にあります。時間の話をしているあいだは、金額を混ぜないという分け方です。時給が入った数字と入っていない数字が同じ表に並ぶと、結局どちらを見て話しているのかが分からなくなるためです。
日別と累積を両方持っているのは、見る人が違うからです。店長が今朝見るのは昨日1日ぶんで、エリアマネージャーが月の中ほどに見るのは累積です。片方しか無いと、どちらかが自分で足し算をすることになります。
累積は月度でいったん0に戻ります。この区切りは締め日の設定に従います。20日締めの会社であれば、21日から翌20日までが1か月です。暦の1日で勝手に切り直したりはしません。
朝の速報にも、同じ数字が並びます
この列は、朝いちばんに開く速報の画面にも出ています。店舗別の棒グラフで並ぶ人時売上高のカードと、人件費の当月進捗を店舗別に一覧するカードの中の人時売上高(累積)の列です。表を開きにいかなくても、並んだ順で外れている店が見えます。
速報のカードは、どれを出すか・どの順に並べるかを、見る人ごとに選んで保存できます。本社の方、エリアを見る方、店舗の方で、既定で出るものが違います。店長の画面に、本部向けの一覧を並べたままにしないための作りです。
速報そのものに何が載っているかは、速報づくりをやめる話のほうで一覧にしています。この記事でお伝えしたいのは、その一覧の中に、時給の入っていない数字が1つ混ざっているということです。そこだけは、時給が上がった月でも読み方が変わりません。
昨日までが確定した状態で並びます
TEAL BIの数字は、前営業日までを確定させたものです。当日の途中経過は混ぜません。実装の中にも、「当日以降の行は確定実績ではない」とはっきり書いてあります。
これは人時売上のような割り算では、とくに効きます。営業中の店の売上を、その時点までの労働時間で割ると、数字は時間帯によって跳ねます。ランチの直後は高く、仕込みの最中は低く出ます。その値を見て人の配置を決めても、意味がありません。
前日ぶんは夜間に取り込まれるので、朝に出社した時点で、昨日の行がもう並んでいます。誰かが集計を実行する操作はありません。
見えるのは、その方に許可されている店舗だけです
この表は店長にそのままお渡しいただけます。並ぶのは、その方に許可されている店舗だけです。担当店舗を持つ方にはその店舗が、エリアを担当する方にはそのエリアの店舗が並びます。
どの会社の人としてログインしているかは、画面から送られてきた値ではなく、ログインした本人から引き直しています。可視範囲は店舗単位でもエリア単位でも設定でき、見せ分けで料金は変わりません。
実際に本番稼働している連携先
この列を出すには、POSレジと勤怠の両方が要ります。片方だけでは割り算になりません。下の表でPOSレジと勤怠・人事の欄がどちらも「本番稼働中」であれば、この列は出せます。
| 区分 | 連携先 | 状況 |
|---|---|---|
| POSレジ | 東芝テック/スマレジ/USENレジ/NECモバイルPOS/ポスタス(POS+) | 本番稼働中 |
| ローズシステム/寺岡精工/funfo/Chompy(モバイルオーダー) | 本番稼働中 | |
| ステアリテール(FoodFrontia Pro)/グローリー/リブオン(宅配Evolution)/ダイニー | 接続対応中 | |
| 予約・口コミ | TableCheck/Googleビジネスプロフィール/Instagram ※Instagramは一部の企業様で稼働中です |
本番稼働中 |
| トレタ/エビカ | 接続対応中 | |
| 仕入 | インフォマート | 本番稼働中 |
| メニューPlus(レシピ) | 接続対応中 | |
| 勤怠・人事 | ジョブカン/King of Time/タッチオンタイム/SmartHR | 本番稼働中 |
| 外部データ | 気象データ(全国・時間帯別) | 本番稼働中 |
| 上記以外 | ネットワーク未接続の店舗を含む | CSVアップロードで統合対象に含められます |
よくある誤解
「人時売上が高い店ほど、良い店ということですよね」
水準そのものの比較には使えません。業態、営業時間の長さ、社員の比率で、出てくる水準が変わるからです。昼だけの業態と深夜まで開けている業態を、この1列で並べても意味がありません。使いどころは2つで、同じ会社の中で、条件の近い店を横に並べることと、同じ店の先月・昨年と比べることです。低く出ている店は「悪い店」ではなく、構造なのか使い方なのかを次に確かめる店です。
「『人時売上を上げろ』は、結局は人を削れという意味ですよね」
逆向きにも使えます。売上が伸びていて、人時売上も伸びている店は、人を増やしてよい店です。いまの人数で、増えたぶんをさばけているということだからです。率だけを見ていると、この店は数字が良いので何も起きません。気づいたときには、店長かベテランのアルバイトが辞めています。この列は、削る根拠と同じだけ、増やす根拠としても使えます。
「売上が伸びれば、勝手に良くなる数字ではないですか」
そのとおりです。だから、伸びなかったときが情報になります。売上が10%伸びた月に人時売上が横ばいだったなら、伸びたぶんと同じだけ時間も増えています。増員そのものが悪いのではなく、増やした時間が売上に結びついたかどうかが、その月のうちに分かるということです。単独の水準ではなく、売上の動きと組み合わせて読む数字だと考えてください。
料金と、導入までの流れ
TEAL BIの料金は1店舗あたり月額8,000円(税抜)だけです。初期費用・導入費用・連携費用はいただいていません。この記事で挙げた人時売上の列も、労働時間の表も、人件費予算の登録も、朝の速報も、この料金に含まれます。オプション料金という考え方をしていません。
導入の流れは、いまお使いのPOSレジ・勤怠システムの構成をお聞きするところから始まります。すでに接続実績のあるものであれば、やり取りは短く済み、約1週間で稼働を開始できます。掲載していないものが混ざっている場合も多くは連携可能で、その際はメーカー様との打ち合わせのうえ新規の連携開発を行います。期間の目安は1か月程度です。いずれの場合も月額8,000円のままで、連携のための費用はいただきません。
画面と機能をひととおりご覧になりたい場合は、サービス紹介資料(全10ページ)をご請求ください。フォームのご入力後、その場でダウンロードいただけます。
よくあるご質問
Q. 何円あればよい、という目安の数字はありますか?
お出ししていません。業態・営業時間・社員比率で水準が変わるので、他社の数字と比べても打ち手にならないからです。目安をお伝えすると、その数字を下回っている店に一律の指示が出て、条件の違う店まで削ることになります。使い方としては、同じ会社の中で条件の近い店を並べることと、同じ店の先月・昨年と比べることをおすすめしています。社内で見比べるぶんには、条件がそろっているので判断に使えます。
Q. 労働時間は、シフト(予定)ですか、打刻(実績)ですか?
打刻の実績です。予定で割ると「予定どおりに人が動いた前提」の数字になり、実際に何が起きたのかが消えてしまいます。シフトの予定は別の列として同じ行に並ぶので、実績と予定を横に見比べることもできます。なお、勤怠を連携していない期間は実績が入らないため、人時売上の欄は空欄になります。
Q. 時間帯ごとにも見られますか?
人件費の表の下に、時間帯別の表があります。ただし労働の側を30分単位で持つ準備が要るので、そこがまだそろっていない企業では、時間帯別の表の労働の列が空欄のまま表示されます。売上と客数は先に出ます。時間帯の区切り(ランチ/ディナーなど)は会社ごとの設定に従います。営業時間の枠に当たらない労働——オープン前の仕込みや、閉店後の片付け——は、最初と最後の区分に寄せて計上します。消えてなくなることはありません。
Q. 人時売上の低い順に並べ替えて、下位の店だけ見ることはできますか?
画面の上ではできません。この表に並べ替えのボタンは無く、店舗と営業日の順で並んだままです。CSVとExcelで保存できるので、順位を付けたい場合はそちらでお願いしています。画面の上でできるのは、店舗・タグ・期間での絞り込み、店舗名と営業日を左に固定したままの横スクロール、列幅の変更です。印刷のボタンと、AIによる読み解きは、この表には付いていません。
Q. 月の途中で見たとき、累積はどこから数えていますか?
締め日の設定に従った月度のはじめからです。20日締めの会社なら21日から数え始め、翌20日で0に戻ります。暦の月とずれている会社でも、社内の締めと同じ区切りで読めます。月をまたいで足し合わせることはしません。人時売上は割り算なので、どの期間の中での割り算なのかが決まっていないと読めなくなるためです。
Q. 人件費率を見るのを、やめたほうがよいということですか?
いいえ。やめる必要はありません。率は、最終的に利益がどうなるかを見るための数字として必要です。この記事で申し上げているのは、率の隣に、時給が入っていない列を1つ置いてくださいということだけです。2つを横に見ると、率が動いた理由が単価の側なのか使い方の側なのかが決まります。どちらか一方に置き換える話ではありません。
Q. 勤怠システムを入れ替える必要はありますか?
ありません。いまお使いのものから、労働時間のデータを受け取る形です。並行して動かしたまま、数字が一致することを確認してから運用を移していただけます。店舗側で新しく入力していただく作業も発生しません。前日ぶんは夜間に取り込まれます。
TEAL BIについて
TEAL BIは、(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けの経営データ統合ダッシュボードです。複数メーカーのPOSレジ・勤怠・仕入の各データを自動連携し、統一フォーマットに変換したうえで、店舗別・日次でFL比率・確定原価率・人件費の着地見込みを可視化します。複数の飲食企業で本番稼働しています。グループ代表自身が20年以上にわたって飲食店経営の現場に携わってきた経験から立ち上げた事業で、現場の経営者が本当に必要とする数字が実装されているのが特徴です。
御社では勤怠システムとPOSレジを、いま何と何でお使いでしょうか。そして、その2つの数字を突き合わせているのは誰でしょうか。この2つをお聞かせいただければ、いまの構成のまま、時間あたりの売上が出せる状態かどうかを、先にお返しします。シフトの予定が取り出せるかどうかで、見えるものが変わりますので、そこもあわせて確認いたします。
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執筆:斉田 教継((株)ラックバッググループ / (株)ティールテクノロジーズ 代表取締役)
20年以上にわたり飲食企業の経営に携わる。(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けデータ統合ダッシュボード「TEAL BI」の事業を主導する。一般社団法人オープン・フードサービス・システム・コンソーシアム データ標準化分科会長として、業界共通POS標準フォーマット基盤の構築を主導。




