店長から「この人件費率、なんでこの数字になるんですか」と聞かれたとき、その場で答えられているでしょうか。多くの場合、いったん持ち帰って本部に確認し、本部がシステムの担当に聞き、答えが戻るころには次の会議が始まっています。そして返ってくる答えのほとんどは「間違っていません。そういう計算です」です。
この往復は、数字が間違っているから起きているのではありません。その数字がどう作られたかが、数字のすぐ横に書いていないから起きています。TEAL BIでは、画面に並ぶ指標のひとつひとつに、意味・計算式・データ元・読むときの注意を持たせて、指標名の横の「?」から開けるようにしています。この記事は、その中身と、なぜそこまで書いているのかについてです。
「合っていない」と言われたものの大半は、合っていないのではありません
現場から上がってくる「数字が違う」の中身を分けていくと、だいたい3つに落ち着きます。ひとつは取り込みの遅れや欠けで、これは本当に直すべきものです。もうひとつは、見ている期間や店舗の範囲が違うもの。そしていちばん多いのが、計算の決め方を知らないまま突き合わせているものです。
3つ目は、誰も間違っていません。それでも現場から見れば「合っていない」で、放っておくと数字そのものが信用されなくなります。いちばん困るのは、信用されなくなった数字が、誰にも見られないまま毎日出続けることです。そうなると、本当に取り込みが欠けた日にも気づけません。
「なんでこの数字なんですか」と聞かれたあとに起きること
答えが返るまでに人を3人またぐ
- 店舗が本部に聞く
- 本部が仕様を調べる、または問い合わせる
- 回答が戻るころには会議が終わっている
- 次の月も、別の人が同じことを聞く
聞かれたその場で開いて見せられる
- 指標名の横の「?」を押す
- 計算式とデータ元がその場に出る
- 「そういう決め方です」まで一度で終わる
- 同じ説明が、全員に同じ文面で出る
変わっているのは数字ではなく、説明がどこに置いてあるかだけです。
指標名の横の「?」に、4つを入れました
開くと出るのは次の4つです。ひとことの意味/計算式/データ元/読むときの注意。このうち後ろの2つが、実際にはいちばん使われます。
たとえば人時売上であれば、意味は「1人時間あたりいくら売れたか。シフトの厚さが売上に見合っているかを見る指標です」、計算式は「人時売上 = 売上(税抜)÷ 労働時間」、データ元は「売上マート ÷ 勤怠連携の労働時間」と出ます。計算式は等幅で、割り算の順序がそのまま読める形で出しています。言葉で「売上を労働時間で割ったもの」と書くより、式の形で見せたほうが早いためです。
「読むときの注意」には、こちらに都合の悪いことも書いています
4つ目の欄には、その数字を鵜呑みにすると外すところを書いています。ここは意図的に、製品にとって不利なことも書いています。いくつか実物を挙げます。
原価率の注意書きには「棚卸を反映しない仕入ベースの速報値です。棚卸を含む確定原価とは一致しません」「仕入は納品日で計上されるため、月末に大きく仕入れた月は高めに出ます」と出ます。つまり、この数字を月次の確定値として使わないでください、と製品自身が書いています。
予算比には「日次の売上予算が登録されていない企業では『-』になります」「期間の途中までしか実績が無い場合、予算は期間全体ぶんなので低く出ます」。人件費と仕入には「連携していない店舗・期間は0になります」。0と「まだ無い」を取り違えると判断ごと間違うので、そこは先に書いておくべきだと考えています。
こう書くと売りにくくなるのではないか、とよく言われます。実際には逆で、先に書いていない注意点は、あとで「聞いていない」という話になります。導入後に効いてくるのはそちらのほうです。
率は、率の平均ではありません
もっとも問い合わせが多く、そしてもっとも説明しにくいのがこれです。表のセルに出ている人件費率や原価率は、そのセルに含まれる合計同士で割り直した値です。日ごとの率を出して平均したものではありません。
この2つは一致しません。売上の大きい日と小さい日が混ざっていれば、率の平均は小さい日に引っ張られます。どちらが正しいという話ではなく、決め方が違うと違う数字になるというだけのことですが、決め方を知らないまま電卓で検算すると必ず食い違います。客単価も同じで、「そのセルの売上合計 ÷ そのセルの客数合計」で計算し直しています。単価の平均ではありません。
この一文が注意書きに書いてあるかどうかで、検算した人が「バグだ」と判断するか「そういう決め方か」と判断するかが変わります。
同じ「今月」が、2つあります
期間の軸にも同じことが起きます。TEAL BIには「年月(暦月)」と「月度(締め日基準)」の2つがあり、締め日が月末でない会社では、この2つは別の期間を指します。
締め日が20日であれば、7月21日から8月20日までが「2026-08」の月度です。暦月で見れば8月1日から8月31日です。同じ画面の同じ指標でも、どちらの軸で切ったかで数字が変わります。経理と現場で数字が合わない、という相談のかなりの部分がここです。締め日を設定していない場合は暦月と同じになる、というところまで注意書きに書いてあります。
データ元まで書いてあると、どこを直せばよいかが分かります
「データ元」の欄は、その数字がどの連携から来ているかを示します。人件費なら勤怠連携、仕入なら仕入連携、売上なら各社のPOSレジを統一した集計済みのデータ、という具合です。
これが分かると、数字がおかしいときにどこを見に行けばよいかが一手で決まります。人件費だけが0の店があれば、それは売上の問題ではなく勤怠連携の問題です。仕入の注意書きには「原価に算入しない区分として設定された科目は除いています」と、設定画面の場所まで書いてあるので、本部の担当者がその場で自分で直せます。
「?」を押してから、判断がつくまで
- 検算が合わない理由が分かる
- 直しに行く先が分かる
- この用途に使ってよいかが分かる
聞く相手を探す時間が、そのまま無くなります。
説明は、見ている人全員に同じ文面で出ます
社内の用語集をExcelやWikiで持っている会社は少なくありません。うまくいかない理由もだいたい同じで、更新が止まり、画面と用語集がずれ、やがて誰も開かなくなります。
この説明は画面そのものに埋め込んであるので、別に開く必要がありません。そして人によって違う説明が出ることがありません。本部の誰かが口頭で伝えた解釈と、別の誰かが伝えた解釈が食い違う、ということが起きなくなります。異動や引き継ぎのときに効いてくるのは、この部分だと思っています。
よくある誤解
「定義は社内で決めてあるので、こちらで持ちます」
決めてあること自体は、まったく問題ありません。ずれるのは、決めた定義と、画面が実際にやっている計算のあいだです。たとえば「人件費率は人件費÷売上」と決めていても、その売上が税抜か税込か、値引き前か後か、率をどの単位で割り直しているかまでは、たいてい決められていません。現場が突き合わせるのはその粒度です。社内の定義を捨ててくださいという話ではなく、画面が何をしているかを画面が自分で言えるようにしておく、という話です。
「そこまで細かい説明を、現場が読むとは思えません」
普段は読まれません。読まれるのは数字が想定と違ったときだけで、それで十分だと考えています。用語集は毎日読むものではなく、揉めたときに開くものです。読まれないから要らないのではなく、開きたい瞬間にその場に無いと意味がない、という性質のものだと思います。だから別ページではなく、数字のすぐ横に置いています。
「注意点まで書いてあると、かえって不安になりませんか」
逆のご感想をいただくことのほうが多いです。数字を扱い慣れている方ほど、注意書きが無いツールを警戒されます。どんな集計にも前提と限界があり、それが書かれていないということは、書けるほど整理されていないか、隠しているかのどちらかだからです。むしろ「棚卸を反映していません」と先に書いてあるほうが、その数字を何に使えばよいかがはっきりします。
実際に本番稼働している連携先
この記事は「数字がどこから来ているか」を主題にしているので、連携先も同じ基準で出します。いま毎日データが流れているものだけを「本番稼働中」とし、そうでないものは分けて書きます。
| 区分 | 連携先 | 状況 |
|---|---|---|
| POSレジ | 東芝テック/スマレジ/USENレジ/NECモバイルPOS/ポスタス(POS+) | 本番稼働中 |
| ローズシステム/寺岡精工/funfo/Chompy(モバイルオーダー) | 本番稼働中 | |
| ステアリテール(FoodFrontia Pro)/グローリー/リブオン(宅配Evolution)/ダイニー | 接続対応中 | |
| 仕入 | インフォマート | 本番稼働中 |
| メニューPlus(レシピ) | 接続対応中 | |
| 勤怠・人事 | ジョブカン/King of Time/タッチオンタイム/SmartHR | 本番稼働中 |
| 予約・口コミ | Googleビジネスプロフィール/TableCheck/Instagram ※Instagramは一部の企業様で稼働中です |
本番稼働中 |
| 外部データ | 気象データ(全国・時間帯別) | 本番稼働中 |
| 上記以外 | ネットワーク未接続の店舗を含む | CSVアップロードで統合対象に含められます |
説明の「データ元」の欄に出てくるのは、この表のうち御社が実際につないでいるものだけです。つないでいない連携から来る指標は、0や「-」として出たうえで、その理由が注意書きに書かれます。数字が出ないことと、数字が0であることを、画面の上で区別できるようにしてあります。
料金と、導入までの流れ
TEAL BIの料金は1店舗あたり月額8,000円(税抜)だけです。初期費用・導入費用・連携費用はいただいていません。指標の説明も、この料金の範囲でお使いいただけます。オプション料金という考え方をしていません。
導入は、いまお使いのPOSレジと勤怠システムの構成をお聞きするところから始まります。すでに接続実績のあるものであれば、やり取りは短く済み、約1週間で稼働を開始できます。掲載していないものが混ざっている場合も多くは連携可能で、その際はメーカー様との打ち合わせのうえ新規の連携開発を行います。期間の目安は1か月程度です。いずれの場合も月額8,000円のままで、連携のための費用はいただきません。
いまお使いいただける範囲の画面と機能をひととおりご覧になりたい場合は、サービス紹介資料(全10ページ)をご請求ください。フォームのご入力後、その場でダウンロードいただけます。
よくあるご質問
Q. 説明の文面は、こちらで書き換えられますか?
いまのところ書き換えはできません。全社に同じ文面が出ます。会社ごとに書き換えられるようにすると、更新されないまま残った文面が新しい担当者を誤らせるためです。社内固有の運用ルール(どの科目を原価に入れるかなど)は、文面ではなく設定の側で持っていただく形にしています。設定を変えれば、説明に出てくる条件のほうが実態に合う形になります。
Q. 計算式は、どこまで細かく出ますか?
画面の数字を再現できる粒度までです。たとえば「人件費率 = 人件費 ÷ 売上(税抜)× 100」まで出しますし、その売上(税抜)が何かを知りたければ、売上(税抜)の説明をもう一度開けば「値引後・税抜」と出ます。指標をたどっていけば、最後は連携元のどのデータかまで行き着きます。逆に、社内のSQLをそのまま見せるようなことはしていません。
Q. 電卓で検算したら、合いませんでした
率と単価であれば、割り直しの単位が原因である可能性が高いです。表のセルの率は、そのセルに含まれる合計同士で割り直しています。日ごとの率を出して平均したものではありません。日別の率を足して日数で割ると、必ず違う数字になります。どちらが正しいという話ではなく、決め方の違いです。この説明も注意書きに入っています。
Q. 経理の締めた数字と、金額が合いません
期間の切り方が違っている場合がほとんどです。「年月(暦月)」で見ているか、「月度(締め日基準)」で見ているかをご確認ください。締め日が20日の会社であれば、7月21日から8月20日までが8月度です。締め日を設定していない場合は暦月と同じ扱いになります。なお、この画面は経理の確定値を作るためのものではなく、日々の判断のための数字です。
Q. ある指標が0で出ています。故障ですか?
その指標のデータ元を連携していない場合、0または「-」で出ます。人件費と労働時間は勤怠連携、仕入は仕入連携から来ているので、そのどちらかが未接続の期間はその指標だけが0になります。説明の注意書きに「連携していない店舗・期間は0になります」と明記してあるので、まずそこをご確認ください。それでも説明がつかない場合は、取り込み側の問題としてこちらでお調べします。
Q. 原価率は、棚卸を含んだ数字ですか?
含んでいません。この画面の原価率は仕入ベースの速報値で、棚卸を含む確定原価とは一致しません。仕入は納品日で計上されるため、月末にまとめて仕入れた月は高めに出ます。注意書きにもそのとおり書いてあります。日々の増減や店舗間の比較には使えますが、月次の確定値としては使わないでください、というのがこちらの立場です。
Q. 説明を見られるのは、管理者だけですか?
いいえ、画面を見られる方であれば誰でも開けます。店長の方がご自分の画面で開いても、同じ文面が出ます。見える店舗の範囲は権限のとおりに制限されますが、指標の説明そのものに制限はかけていません。むしろ現場で開いていただくことを想定して、専門用語をなるべく使わない書き方にしています。
TEAL BIについて
TEAL BIは、(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けの経営データ統合ダッシュボードです。複数メーカーのPOSレジ・勤怠・仕入の各データを自動連携し、統一フォーマットに変換したうえで、店舗別・日次でFL比率・確定原価率・人件費の着地見込みを可視化します。複数の飲食企業で本番稼働しています。グループ代表自身が20年以上にわたって飲食店経営の現場に携わってきた経験から立ち上げた事業で、現場の経営者が本当に必要とする数字が実装されているのが特徴です。
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執筆:斉田 教継((株)ラックバッググループ / (株)ティールテクノロジーズ 代表取締役) 20年以上にわたり飲食企業の経営に携わる。(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けデータ統合ダッシュボード「TEAL BI」の事業を主導する。一般社団法人オープン・フードサービス・システム・コンソーシアム データ標準化分科会長として、業界共通POS標準フォーマット基盤の構築を主導。




