【結論】毎月、締めた原価率が出ます。上がった、下がった。そこで会議が終わっていないでしょうか。単月の1つの数値は、その店がどちらへ向かっているのかを教えてくれません。そして正直に申し上げると、原価率だけを何十か月ぶん並べても、あまり意味はありません。意味が出るのは、棚卸高・売上高・確定原価率という3つを、同じ時間軸に重ねたときです。TEAL BIは、この3つを店舗ごとの線として18か月以上さかのぼって並べます。売上が横ばいなのに棚卸高だけ増えている店、棚卸高の山と原価率の山が重なっている店が、線の形で見分けられます。
【この記事でわかること】
・「原価率が上がりました」の次が続かない理由
・棚卸高が増えたことが、良いとも悪いとも言えない理由
・棚卸高と売上高の比率を追うと、何が異常値として浮かぶか
・棚卸高の山と原価率の山が重なっているかどうかで、話す論点が変わること
・水準ではなく方向(トレンド)で見る、という読み方
「原価率が上がりました」の次が、続いていますか
月末の閉店後、店長が冷蔵庫と乾物棚を数えて、数字を上げます。本部で集め、請求と突き合わせ、経理が締めます。ここまでで、早い会社でも翌月の上旬、多くは中旬までかかります。そうして出てくるのが、その月の原価率という1つの数値です。
この数値は、間違ってはいません。ただ、それ単独では、次の行動につながりません。32.4%と出たとして、会議で話せるのは「先月より上がりました」「気をつけましょう」まで。そこから先が続かないのは、担当者の力不足ではありません。単月の数値には、方向が入っていないからです。
そもそも、上がったことが悪いとは限りません。原価の良い商品が売れた月かもしれませんし、値上がりを飲んだ月かもしれません。逆に、下がったから良いとも限りません。問われているのは高いか低いかではなく、その水準が適正なのか、そしていまどちらへ向かっているのか、です。単月の数値は、そのどちらにも答えられません。
原価率だけを並べても、あまり意味はありません
ここは、都合の悪いほうから書きます。確定原価率を18か月ぶん、店舗ごとの線にして並べる。それだけでは、たいして役に立ちません。線が増えて、去年の同じ月と比べられるようになるだけです。
理由ははっきりしています。原価率は結果の数字だからです。結果だけを長く眺めても、なぜそう動いたのかは出てきません。上がった月と下がった月が並ぶだけで、そこから先に進めません。
意味が出るのは、原因の側にある数字と、同じ時間軸に重ねたときです。具体的には、棚卸高と売上高の2つです。この3本が同じ画面に乗ってはじめて、線の形が語り始めます。
棚卸高が増えたことは、良いことでも悪いことでもありません
棚卸高が前年より増えていたとします。これは問題でしょうか。それだけでは決まりません。売上がどうだったかを見ないと、判断のしようがないからです。
売上が伸びていて、棚卸高も増えている。これは自然です。扱う量が増えれば、月末に残っている量も増えます。むしろ増えないほうが、欠品を出していないか気になります。
売上は横ばいなのに、棚卸高だけ増えている。こちらは異常値です。同じだけしか売れていないのに、抱えている在庫が膨らんでいる。買いすぎているか、使えていないか、どちらかです。
同じ「棚卸高が増えた」でも、売上と並べると意味が正反対になる
売上が伸びて、棚卸高も増えた
- 扱う量が増えたぶん、残る量も増えている
売上は横ばいなのに、棚卸高だけ増えた
- 同じだけしか売れていないのに、抱えている量が膨らんでいる
棒=売上高/線=棚卸高。横軸は18か月。
ですから、棚卸高は単独ではなく、売上高に対する比率で追います。棚卸高÷売上高。この形にすると、規模の違う店を同じものさしに乗せられますし、売上の増減による自然な変動を差し引いて見られます。
この比率がじわじわ上がっている店は、在庫が重くなっています。単月では気づけません。半年、1年という長さで並べてはじめて、傾きとして見えてきます。
棚卸高の山と、原価率の山は重なっていますか
もう1つ、重ねてはじめて読めることがあります。棚卸高が動いた月と、原価率が動いた月が、重なっているかどうかです。
確定原価は、次の式でできています。
前月末の棚卸高 + その月の仕入 − 月末の棚卸高
前の月から持ち越した在庫に、その月に買ったものを足し、月末に残っていたぶんを引く。残っていないものは使ったはずだ、という考え方です。これを売上で割ったものが確定原価率になります。
式を見れば分かるとおり、月末の棚卸高は、そのまま原価率に効きます。月末に多く残せば原価は小さく出ますし、少なく残せば大きく出ます。だからこそ、2本の線がどう連動しているかを見ておく意味があります。
2本の山が重なっている場合。原価率の変動が、在庫の増減にかなり引きずられている状態です。月末にまとめて仕入れた月、数え漏らした月、廃棄を出した月——動いている理由は在庫の側にあります。話すべきは発注のタイミングと数え方です。
2本の山が重なっていない場合。在庫は平らなのに原価率だけが動いているのですから、理由は別のところにあります。仕入単価の値上がり、メニュー構成の変化、ポーションの緩み。同じ「原価率が上がった」でも、次に開くべき画面が変わります。
どちらだと分かるだけで、会議の残り時間の使い道が変わります。いまは、この切り分けをしないまま「気をつけましょう」に着地していることが多いのではないでしょうか。
見るべきは水準ではなく、方向です
ここまでを一言でまとめると、単月の高い低いではなく、長期の傾きを見る、ということです。
2年分あると、2つのものが分かれます。季節の形と、トレンドです。夏に上がって冬に下がる、という形を持っている会社は多く、それが分かっているだけで「先月より上がった」の意味が変わります。そのうえで、去年の同じ月と比べてどうか、という見方ができるようになります。
そして、店舗の線を1つのグラフに重ねると、もう1段の切り分けができます。
全店が同じ形で動いている月は、会社の外の要因です。相場、天候、価格改定。個別の店に話をしても仕方がありません。1店だけ形が違う月は、その店の中の話です。そこだけ見に行けばよい。この見分けは、線を重ねないと絶対に付きません。
会社の中で起きている微妙な動きは、たいてい単月では見えない大きさです。それを長期の傾きとして捉えるための画面だと考えてください。
同じ画面に、4つのグラフを置いています
ここまで書いてきた読み方を、そのまま画面にしたものが月末棚卸高タブです。4つのグラフが同じ画面に並びます。
月末棚卸高タブには、4つのグラフが同じ画面に並びます
棚卸高
- 月末にいくら抱えているかが、店舗ごとの線で出る
棚卸高 ÷ 売上高
- 店の大きさをそろえて、在庫が重くなる傾きを見る
確定原価率
- 締めた原価率が、店舗ごとに18か月ぶん並ぶ
売上 × 原価率
- 率ではなく金額。影響の大きい店が分かる
2つを重ねて、山が連動しているかを見る。重なる=在庫側の問題/重ならない=単価・構成・ポーション側の問題。
期間は既定で18か月前から先月までです。変更できますので、データが入っていればそれより前もさかのぼれます。2年、3年と積み上がるほど、季節とトレンドの切り分けは確かになります。
店舗数が多い会社では、線が増えすぎて読めなくなります。TEAL BIは棚卸高の大きい店舗から順に表示し、画面に出していない店舗が何店あるかを、グラフの近くにそのまま書いています。絞り込みはタグ・分類・科目・商品区分で行えるので、担当エリアだけ、特定の分類だけ、という見方に切り替えられます。
線が動いた理由は、商品単位まで開けます
確定原価の式が3つの項でできているということは、原価率が動いたときの理由も3通りあるということです。仕入が増えたのか、月末の在庫が減ったのか、前月からの持ち越しが多かったのか。1つの数値のままでは、この3つが混ざったままになります。
TEAL BIは、この3つを商品ごと・店舗ごとに別の列として出します。前月棚卸、当月仕入、当月棚卸が、商品名と単位の付いた行で並びます。グラフで気になった月と店舗を見つけたら、そのまま下を1段開けます。仕入が膨らんだ商品と、在庫が減っただけの商品を分けられます。この表はそのままCSVとExcelに出せます。
商品ごとに、いまの使い方であと何か月分の在庫を持っているかを出す列もあります。そちらは「棚卸高は、店舗ごとにいくらが適正か把握できていますか」に書きました。
データが無い月を、0として描きません
細かい話に見えますが、ここは意図して決めています。棚卸を出していない月、まだ連携が始まっていない月は、点を打たずに線も切ります。0として描くと、グラフの上では原価率が急落したように見えます。それを見た人は「その月は良かった」と読みます。
Excelで集計したものを並べたときに起きがちなのが、これです。空欄が0になり、無かった月が「優秀な月」として残ります。棚卸は毎月きれいに揃うとは限りません。店舗の開店・閉店、連携を始めた時期、棚卸そのものを飛ばした月。揃わなかったことを、揃ったことのように見せない、というのがここでの方針です。傾きを読む画面なので、偽の点が1つ混ざるだけで読み違えます。
締める前に見る画面とは、別のものです
混同されやすいので分けて書きます。この記事で扱っているのは、締めたあとに確定した数字を並べる話です。棚卸が入り、仕入が確定し、売上が固まってから出るものなので、対象になるのは先月までです。
これとは別に、月の途中で原価率を見る画面があります。そちらは仕入が積み上がっていく途中を日々追いかけ、まだ受け取っていない仕入を別の列として足すことで、締めたときにどこへ着地するかを先に見ておくためのものです。仕組みは「今月の原価率が、締めたあとに跳ね上がる」に書きました。
どちらか一方があればよい、というものではありません。月の途中に見る数字は手を打つためのもので、締めたあとの数字は振り返って基準を作るためのものです。基準が無いまま途中経過だけを見ても、その数字が高いのか低いのかは決まりません。
お渡しできている範囲は、まだ広くありません
正直に書きます。仕入データの連携そのものは本番稼働中です。インフォマートとの連携は毎日動いていて、複数の契約に分かれている場合や、納品場所と店舗が1対1でない場合の扱いは「インフォマートは入っているのに、全社の仕入が1枚になりません」に書きました。
一方で、この棚卸と確定原価率の画面そのものは、2026年8月20日から順にお渡ししている途中です。まず自分たちの会社で使い始め、そこから広げています。「お申し込みいただければ明日から出ます」とは、まだ申し上げません。棚卸の運用がどうなっているかをうかがったうえで、順にご案内しています。
実際に本番稼働している連携先
この記事は「何が動いていて、何がこれからか」を分けて書いているので、連携先も同じ基準で出します。いま毎日データが流れているものだけを「本番稼働中」とし、そうでないものは分けて書きます。この画面が使うのは、下の表の「仕入」の1行目と、POSレジの売上です。
| 区分 | 連携先 | 状況 |
|---|---|---|
| 仕入 | インフォマート | 本番稼働中 |
| メニューPlus(レシピ) | 接続対応中 | |
| POSレジ | 東芝テック/スマレジ/USENレジ/NECモバイルPOS/ポスタス(POS+) | 本番稼働中 |
| ローズシステム/寺岡精工/funfo/Chompy(モバイルオーダー) | 本番稼働中 | |
| ステアリテール(FoodFrontia Pro)/グローリー/リブオン(宅配Evolution)/ダイニー | 接続対応中 | |
| 予約・口コミ | TableCheck/Googleビジネスプロフィール/Instagram ※Instagramは一部の企業様で稼働中です | 本番稼働中 |
| トレタ/エビカ | 接続対応中 | |
| 勤怠・人事 | ジョブカン/King of Time/タッチオンタイム/SmartHR | 本番稼働中 |
| 外部データ | 気象データ(全国・時間帯別) | 本番稼働中 |
| 上記以外 | ネットワーク未接続の店舗を含む | CSVアップロードで統合対象に含められます |
よくある誤解
「原価率は経理が出しているので、同じものが二重になるだけでは」
同じ数字を二重に作る話ではありません。経理が出しているのはある月の値で、ここで出すのは店舗別に並んだ時系列と、その関係です。経理の締めを置き換えるものでもありません。実際、経理が出した数字とここで出る数字が食い違ったときに、どこで分かれたのかを商品単位までたどれることのほうが、使い道としては大きいです。仕入の計上のしかたや、棚卸の対象範囲の違いが、たいていそこに出ます。
「棚卸の精度が店舗によってばらばらなので、並べても意味が無いのでは」
ばらつきがあることは、並べない理由にはなりません。むしろ、並べてはじめてばらつきが見えます。ある店だけ棚卸高が毎月ほぼ同じ値で動かない、ある店だけ確定原価率が月ごとに大きく振れる——こうした形は、線にすると一目で分かります。数え方をそろえる作業は、どの店から手を付けるべきかが決まってから始めたほうが早いです。そろえてから始めようとすると、たいてい始まりません。
「うちは棚卸を月末にやっていないので、合わないと思います」
月末ちょうどでなくても構いません。棚卸として上がってきた数字を、その月の締めの数字として扱います。締め日が20日であれば、その締めに合わせた区切りで売上も集計します。数える日が数日ずれること自体は、月ごとの推移を見るうえでは問題になりません。問題になるのは、ある月だけ数えていない、というほうです。その月は線を切って表示します。
料金と、導入までの流れ
TEAL BIの料金は1店舗あたり月額8,000円(税抜)だけです。初期費用・導入費用・連携費用はいただいていません。棚卸と仕入の取り込み、確定原価率の計算、店舗別の推移、過去ぶんの遡り、CSVとExcelへの出力は、すべてこの料金に含まれます。オプション料金という考え方をしていません。
導入の流れは、仕入データがどこから入っているかと、棚卸をどのように上げているかをうかがうところから始まります。インフォマートは接続実績のある連携先ですので、やり取りは短く済み、約1週間で稼働を開始できます。推移は過去のデータが入ってはじめて出るものですので、さかのぼれるぶんは最初にまとめて取り込みます。あわせてお使いのPOSレジもうかがい、掲載していないメーカーが混ざっている場合は、メーカー様との打ち合わせのうえ新規の連携開発を行います。期間の目安は1か月程度です。
画面と機能をひととおりご覧になりたい場合は、サービス紹介資料(全10ページ)をご請求ください。フォームのご入力後、その場でダウンロードいただけます。
よくあるご質問
Q. どこまでさかのぼって見られますか?
画面の初期表示は、18か月前から先月までです。期間は変更できますので、それより前のぶんも、データが入っていれば表示されます。さかのぼれる範囲は、仕入と棚卸のデータをどこまでお預かりできるかで決まります。季節の形とトレンドを切り分けるには、24か月以上あるほうが確かです。連携を始める前のぶんも、まとめて取り込むところから始めるのが通常です。
Q. 棚卸を紙でやっているのですが、そのままで使えますか?
数えた結果が電子の形になっている必要があります。仕入の側と同じ経路で棚卸の数字も入ってくる状態であれば、そのまま使えます。紙で数えてから入力している場合も、入力先が決まっていれば同じことです。入力する場所が無い、という段階の場合は、そこをどうするかからご相談いただく形になります。数える作業そのものを無くす話ではありません。
Q. 確定原価率は、店舗ごとにしか出ませんか?
グラフは店舗ごとの線として出ます。複数の店舗をまとめて見たい場合は、絞り込みで対象を選んでいただく形になります。タグを3段階まで設定できますので、業態・エリア・担当といった切り方であらかじめ束ねておけます。会社全体の1本だけを見たい、という使い方もできますが、全店が同じ形で動いているのか1店だけ違うのかが分からなくなるので、この画面の主眼ではありません。
Q. 原価率が異常な値になった月は、原因まで分かりますか?
どこで起きたかは分かります。その月・その店舗の棚卸一覧を開けば、前月棚卸・当月仕入・当月棚卸が商品ごとに並びます。仕入が突出している商品なのか、棚卸が急に減っている商品なのかは、そこで見分けられます。ただし、なぜそうなったのか——数え漏らしたのか、廃棄したのか、伝票が翌月に回ったのか——までは、この画面では分かりません。当たりを付けるところまでが役割です。
Q. 仕入は使った量ではなく買った量ですが、そのままでよいのですか?
よいのです。買った量と使った量のずれを、月末の棚卸で埋めるという考え方の式だからです。月末にまとめて仕入れた月は、その月の仕入額が大きくなりますが、そのぶんは月末の棚卸高にも乗るので、引き算で相殺されます。これが、締めたあとの数字が締める前の数字より落ち着いている理由です。逆に言えば、棚卸が入っていない月は、この相殺が効きません。
Q. 数えた店長本人に、その店のぶんだけを返すことはできますか?
できます。店長には自店だけ、エリアマネージャーには担当店舗だけ、本部には全店、というように、同じ画面で見える範囲だけを変えて配れます。私たちがこれをおすすめしているのは、情報を絞るためではなく逆の理由です。棚卸をしているのは店舗ですので、数えた結果が自分のところに戻ってくるかどうかで、翌月の数え方が変わります。本部だけが見ている状態が続くと、棚卸はただの作業になります。
Q. 会計ソフトの数字と一致しますか?
一致するとは限りません。仕入をいつの月に計上するか、棚卸に何を含めるかが、会計側の運用と揃っているとは限らないからです。会計ソフト(freee会計・マネーフォワード クラウド会計)との接続はできますので、突き合わせること自体は可能です。ずれの正体はたいてい時点と定義の違いです。その話は「管理会計と財務会計で数字が合わない」に書きました。
TEAL BIについて
TEAL BIは、(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けの経営データ統合ダッシュボードです。複数メーカーのPOSレジ・勤怠・仕入の各データを自動連携し、統一フォーマットに変換したうえで、店舗別・日次でFL比率・確定原価率・人件費の着地見込みを可視化します。複数の飲食企業で本番稼働しています。グループ代表自身が20年以上にわたって飲食店経営の現場に携わってきた経験から立ち上げた事業で、現場の経営者が本当に必要とする数字が実装されているのが特徴です。
御社では「売上が伸びていないのに、棚卸高だけが増えている店」を挙げられるでしょうか。挙げられないとしたら、それは管理が甘いからではなく、3つの数字が別々の場所に置かれていて、重ねて見たことがないからです。棚卸と仕入と売上のデータをいただければ、店舗別に重ねた実際の画面をお見せします。60分のお時間で、どの店の線が離れているところまでご覧いただけます。
執筆:斉田 教継((株)ラックバッググループ / (株)ティールテクノロジーズ 代表取締役)
20年以上にわたり飲食企業の経営に携わる。(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けデータ統合ダッシュボード「TEAL BI」の事業を主導する。一般社団法人オープン・フードサービス・システム・コンソーシアム データ標準化分科会長として、業界共通POS標準フォーマット基盤の構築を主導。




