【結論】メニューごとの標準原価は、一度作ったあとで更新が止まります。仕入値は毎月動くのに、原価表は登録した日のままです。レシピを直すたびに原価を手で計算し直す作業が、続かないからです。メニューPlusでレシピを維持していただければ、その時の仕入値で商品ごとの原価が計算し直され、それがTEAL BIに取り込まれて上書きされます。人が触るのはレシピだけで、原価表を作り直す作業そのものが要らなくなる、という話です。この記事は、その仕組みと、いまどこまで動いているのかを正直に書いたものです。
【この記事でわかること】
・標準原価の更新が、なぜ2回目で止まるのか
・レシピを直すと原価のほうが追随する、という仕組みの中身
・ここでいう「時価」が、いつの仕入値を指しているのか
・いま動いていることと、これからのことの線引き
・始めるために、お客様側で必要になる準備
標準原価を、いま誰が直していますか
ラーメンのチャーシューを1枚から2枚に増やす。この判断そのものは、その場で決まります。手間がかかるのはそのあとです。増えた1枚ぶんの金額を計算して、そのメニューの標準原価に足し込む。表を開いて、行を探して、数字を書き換える。1品変えるたびに、この作業が発生します。
メニューが数百から千を超える企業で、この作業を担当されているのは、たいてい本部の1人か2人です。そして変更は日常的に起きます。季節メニューの入れ替え、仕入先の変更、規格の変更、フェアの単発商品。担当者が丁寧な方であるほど、この作業に時間が吸われていきます。
ここで起きているのは「怠慢」ではありません。仕組みのほうが、人が追いつける速さになっていないだけです。
限定メニューは、原価が入らないまま流れていきます
もう1つ、よく伺うのが店舗限定・期間限定のメニューです。本部が管理している原価表には載っておらず、原価が空欄のまま販売されています。店舗の裁量で出しているものほど、この状態になりやすくなります。
この影響は、思っているより大きく出ます。売上には計上されるのに原価が入っていないので、その商品が売れれば売れるほど、店舗全体の原価率は実態より低く見えます。原価率が良い店舗として評価され、実際には利益が出ていない、ということが起こります。
逆に、原価が入っていないことに気づいて手作業で埋めようとすると、今度は限定メニューが増えるたびに作業が増えます。どちらに転んでも、人が追いかける前提のままです。
「月に1回、原価を拾って貼り直す」が現実的な上限です
この問題に正面から取り組まれている企業様に伺うと、多くの場合いちばん丁寧な運用がこれです。月に1回、レシピ側のシステムから原価データを書き出して、集計している表に貼り直す。手作業ですが、月次であればなんとか回せます。
ただ、ここには構造的な上限があります。人が拾ってくる限り、原価は月に1回しか更新されません。つまり日次の原価率は、どれだけ丁寧に運用しても原理的に出せません。今日の原価率が知りたい、という話にしたとたん、この運用は成立しなくなります。
そして貼り直しの作業自体が、担当者が休んだ月や、決算期と重なった月に飛びます。飛んだことに誰も気づかないまま、古い原価で数か月が過ぎる、ということも起こります。
メニューPlusでレシピを直せば、原価のほうが追いかけてきます
やろうとしていることは単純です。人が更新するのはレシピだけにして、原価表は人が触らない——それだけです。
人が触るのは、レシピだけになります
1品変えるたびに、4工程
- レシピを直す
- 増減した食材の金額を計算する
- 原価表の該当行を書き換える
- 集計用の表に貼り直す
レシピを直す。以上
- レシピを直す
- 金額の計算は発生しない
- 原価表は人が触らない
- 限定メニューも同じ扱いで入る
チャーシューを2枚に変えたなら、レシピの使用量を2枚に直す。それで終わりです。
チャーシューを2枚に変えたなら、レシピの使用量を2枚に直す。それで終わりです。金額はレシピ側が持っている仕入値から自動で計算し直されるので、担当者が電卓を叩く場面がありません。
この「レシピを正しく保つ」作業は、なくせるものではありません。ただ、メニュー開発をされている以上どのみち発生している作業でもあります。増えるものは何もなく、原価計算のぶんだけが消える、という形になります。
そこから先はTEAL BI側の話で、書き換わった商品ごとの原価を毎日取り込み、レジの販売実績と掛け合わせます。担当者が転記する工程は入りません。
ここでいう「時価」は、いつの仕入値のことか
言葉の定義をはっきりさせておきます。ここでいう時価は、市場の相場観や、市況の予測値ではありません。御社が実際に仕入れている、直近の単価です。
外部から相場データを買ってきて当てているわけではない、ということです。これは地味に重要で、数字の根拠を店舗や役員に説明するときに「うちが実際に払っている金額です」と言い切れるかどうかが変わります。相場を当てにいくと、なぜその原価なのかを誰も説明できなくなります。
「時価」は、御社が実際に払っている金額です
- 今日の原価
- 仕入先を変えても追随する
- 根拠を実額で説明できる
値上げの通知を受け取ったときも、担当者が気づいて手当てする工程がありません。
同じ理由で、この数字は仕入先を切り替えたときにも、値上げの通知を受け取ったときにも、そのまま追随します。担当者が気づいて手当てする必要がありません。
メニューPlusとの連携は、いまどこまで動いているのか
ここは正直に書きます。この記事に書いた「レシピから時価の原価を毎日更新する」仕組みは、本番ではまだ動いていません。
できているのは手前までです。レシピ・歩留まり・仕掛品の取り込みと、仕入商品との突き合わせは終わっていて、実データで通ることは確認済みです。残っているのは、これを毎日の更新として本番で動かすところと、画面に出すところです。
ですので、この記事を読んで「申し込めば明日から原価表の更新がなくなる」とは受け取らないでください。いまお使いいただけるのは、日次の売上・人件費・仕入と、実際に計上された仕入にもとづく確定原価までです。
原価と在庫を含めた全体像を5段階に分けて整理したものが別記事にあります。どこまでが本番で、どこからがこれからなのかは、そちらの表がいちばん分かりやすいと思います。→ 「棚卸をするまで在庫が分からない」を終わらせる:レシピ・仕入・販売を1本の線でつなぐ
始めるために、お客様側で必要になること
お願いすることは2つだけです。どちらもマスタの作り替えではありません。
1つは、レシピの食材に、仕入商品が紐付いていること。ここが空欄だと、その食材ぶんの金額が出せません。空欄が残っている場合は、直近の仕入実績と照合してこちら側で候補をお出しし、ご確認をお願いする形にしています。
もう1つは、レシピと、レジのメニューコードが結びついていること。レシピ側に「このレシピはレジのこの商品です」と登録する欄があるのですが、レシピだけを運用していてこの欄が空のまま、という企業が少なくありません。製品の制約ではなく、登録がこれからという状態です。
そして全部を一度に埋める必要はありません。売れている順に上から進めるのが現実的で、上位数十件を埋めた時点で売上の半分近くがカバーできます。まず動かしてみる、という段階ならそれで十分に形になります。
実際に本番稼働している連携先
この記事は「何が動いていて、何がこれからか」を主題にしているので、連携先も同じ基準で出します。いま毎日データが流れているものだけを「本番稼働中」とし、そうでないものは分けて書きます。
| 区分 | 連携先 | 状況 |
|---|---|---|
| POSレジ | 東芝テック/スマレジ/USENレジ/NECモバイルPOS/ポスタス(POS+) | 本番稼働中 |
| ローズシステム/寺岡精工/funfo/Chompy(モバイルオーダー) | 本番稼働中 | |
| ステアリテール(FoodFrontia Pro)/グローリー/リブオン(宅配Evolution)/ダイニー | 接続対応中 | |
| 仕入 | インフォマート | 本番稼働中 |
| メニューPlus(レシピ) | 接続対応中 | |
| 勤怠・人事 | ジョブカン/King of Time/タッチオンタイム/SmartHR | 本番稼働中 |
| 予約・口コミ | Googleビジネスプロフィール/TableCheck/Instagram ※Instagramは一部の企業様で稼働中です |
本番稼働中 |
| 外部データ | 気象データ(全国・時間帯別) | 本番稼働中 |
| 上記以外 | ネットワーク未接続の店舗を含む | CSVアップロードで統合対象に含められます |
この表で「メニューPlus(レシピ)」が接続対応中になっているのが、まさにこの記事の主題にあたる部分です。データの取込と突き合わせまでは終わっていますが、毎日の更新として本番で動かすのはこれからなので、この行についてだけは稼働の時期をお約束していません。
よくある誤解
「原価はレシピ側のシステムで見られるので、わざわざ持ってこなくてよいのでは」
原価そのものは、たしかにレシピ側で見られます。足りないのは「その原価の商品が、どの店舗で何食売れたか」のほうです。レシピ側は販売実績を持っていないので、原価は出せても原価率は出せません。逆にレジ側は販売実績を持っていますが、原価は登録された日のまま止まっています。両方を持っている場所が、これまでどこにもなかった、というのがこの話の出発点です。
「原価が毎日動いたら、月次で締めた原価率と合わなくなりませんか」
別物として扱っていただくのが正解です。締めのあとに確定する原価率は、実際に計上された仕入から出すもので、こちらが会計上の正です。レシピから出す原価は、その正の数字が出るまでの日々を埋めるためのもので、置き換えるものではありません。月次の数字を作り直す話ではなく、月次を待つあいだの空白を埋める話です。
「レシピを直すと、過去の原価まで書き換わってしまいませんか」
書き換わりません。原価は日付ごとに保持するので、レシピを変更した日より前の数字はそのまま残ります。過去の原価率が後から動いてしまうと、月次の振り返りが成立しなくなるためです。逆に言えば、「いつレシピを変えたか」も数字の履歴として残ります。
料金と、導入までの流れ
TEAL BIの料金は1店舗あたり月額8,000円(税抜)だけです。初期費用・導入費用・連携費用はいただいていません。日次の売上・人件費・仕入と、実際に計上された仕入にもとづく確定原価は、この料金の範囲で今日からお使いいただけます。オプション料金という考え方をしていません。
導入は、いまお使いのPOSレジと勤怠システムの構成をお聞きするところから始まります。すでに接続実績のあるものであれば、やり取りは短く済み、約1週間で稼働を開始できます。掲載していないものが混ざっている場合も多くは連携可能で、その際はメーカー様との打ち合わせのうえ新規の連携開発を行います。期間の目安は1か月程度です。いずれの場合も月額8,000円のままで、連携のための費用はいただきません。
一方で、この記事の主題であるレシピから時価の原価を毎日更新する部分は、料金表に載る「機能」としてご案内できる段階にありません。いま申し込めば使えます、というご案内はしないことにしています。ご関心のある企業様とは、先行して検証にご参加いただく形でご相談させてください。
いまお使いいただける範囲の画面と機能をひととおりご覧になりたい場合は、サービス紹介資料(全10ページ)をご請求ください。フォームのご入力後、その場でダウンロードいただけます。
よくあるご質問
Q. うちの標準原価と、この記事でいう原価は同じものですか?
考え方は同じで、更新のされ方が違います。どちらも「このメニューを1食作るのにいくらかかるか」です。違うのは、標準原価が人の手で更新されるのに対して、こちらはレシピと仕入値から毎日計算し直される点です。標準原価をやめてくださいという話ではなく、更新の手間がかかっていた部分を機械に寄せる、とお考えください。
Q. レシピを登録していないメニューは、どうなりますか?
そのメニューは計算の対象外になります。売上には計上されますが、レシピ由来の原価は出ません。全メニューが揃っていないと始められない、ということはなく、登録されている範囲から順に見えるようになります。売れている上位から進めていただくのが現実的です。
Q. 仕込みや自家製のたれのように、自社で加工しているものはどう扱われますか?
出来上がり量で按分して、仕入れている材料まで分解します。「たれ15g」で止めずに、そのたれに使われている調味料の何グラムまで下ろす、ということです。加工品を多く使う業態ほど、ここを飛ばすと数字が合わなくなります。なお、その先の材料に仕入商品が紐付いていない場合は、その分だけ計算に入りません。
Q. 原価が上がったときに、TEAL BIが値上げを提案するのですか?
しません。売価をどうするかは経営判断で、私たちが持ち込む領域ではないと考えています。お出しするのは「どの商品の原価が、いつ、いくら動いたか」までです。そのうえで売価を動かすのか、レシピを見直すのか、そのままいくのかは、御社の判断になります。
Q. 市場から直接仕入れているものなど、仕入システムを通らない仕入があります。
仕入システムを経由しないものは、現時点では単価を取り込む経路がありません。そのぶんは計算に入らないため、対象の食材については数字がずれます。どの範囲を対象にできるかは、事前に整理してお伝えします。
Q. この記事の仕組みは、いま申し込めば使えますか?
使えません。本番でまだ動いていないため、時期をお約束できる段階にもありません。この点をあいまいにしたくないので、はっきり書かせてください。いまお使いいただけるのは、日次の売上・人件費・仕入と、実際に計上された仕入にもとづく確定原価までです。ご関心のある企業様には、先行して検証にご参加いただく形でご相談させてください。
TEAL BIについて
TEAL BIは、(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けの経営データ統合ダッシュボードです。複数メーカーのPOSレジ・勤怠・仕入の各データを自動連携し、統一フォーマットに変換したうえで、店舗別・日次でFL比率・確定原価率・人件費の着地見込みを可視化します。複数の飲食企業で本番稼働しています。グループ代表自身が20年以上にわたって飲食店経営の現場に携わってきた経験から立ち上げた事業で、現場の経営者が本当に必要とする数字が実装されているのが特徴です。
この取り組みは、先行して検証にご参加いただける企業様を探している段階です。レシピをどこまで登録されているか、限定メニューをどう管理されているかをお聞かせいただければ、いまの構成で何がどこまで見えるようになるかをお返しします。
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執筆:斉田 教継((株)ラックバッググループ / (株)ティールテクノロジーズ 代表取締役) 20年以上にわたり飲食企業の経営に携わる。(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けデータ統合ダッシュボード「TEAL BI」の事業を主導する。一般社団法人オープン・フードサービス・システム・コンソーシアム データ標準化分科会長として、業界共通POS標準フォーマット基盤の構築を主導。




