人件費は「削る」より“設計”で下がる

勤怠×売上を日次で回す前に、まず「規律」を作れ

例話:シフト9時の料理長が、10時に来る店は必ず弱くなる

まず、めちゃくちゃよくある話をします。

シフト表には「9:00出勤」と書いてある。
でも実際は、料理長が10:00に入ってくる。しかも堂々と。

で、周りはこうなるんですよね。
「まあ料理長だし…」
「忙しいからしょうがないよね…」

これ、ぶっちゃけ一番危険です。

なぜか。
この瞬間から“規律”が崩れるからです。

偉い人が例外を作ると、現場は必ず見ます。
そして必ず真似します。

  • ちょい遅刻が増える
  • ちょい早退が増える
  • 中抜けが増える
  • 打刻漏れが増える
  • 勝手な残業が増える(=残ってるだけで偉い、みたいな空気)

最初は小さい。1人5分、10分。
でも飲食って、ここが積み上がった瞬間に利益が死にます。

だから僕は、人件費の話をするときに最初にこう言います。

人件費の管理は、労務管理(規律)の管理なんですよね。
ここが甘いと、どれだけ数字を見ても、結局最後は崩れます。


結論:人件費の上振れは「人を減らせ」じゃない。“ズレ”と“規律崩れ”を潰すゲーム

人件費が上振れた。
その瞬間に「シフト削れ」って言うのは、短期的には気持ちいいです。

でも、十店舗・二十店舗の会社でそれをやると、だいたい逆に痛い目見ます。
なぜなら、現場が壊れて売上も落ちるし、ミスも増えるし、結局残業も増えるからです。

ここで整理します。
人件費は“金額”じゃなくて“時間”で管理するのが基本です。

金額で見ようとすると、ブレる要因が多すぎる。

  • みなし残業の未達/超過
  • 手当
  • 社員とアルバイトの構成比
  • 時給単価の違い

だからまずは、ここです。

「予定(シフト)」と「実績(打刻)」の差を、日次で潰す。

これができないと、人件費管理は“月末に祈るゲーム”になります。断言します。


まず大前提:シフトは「飾り」じゃない。規律を生む“契約”です

ここ、超重要。

シフトが実態と一致していない店は、もうその時点で負けてます。
なぜなら、不正も怠惰も、見抜けないから。

「シフトが9時」って書いてあるから、10時出勤は“遅刻”になる。
これ、当たり前ですよね。

でも、シフトが適当だと、

  • 遅刻が遅刻にならない
  • 中抜けが中抜けにならない
  • 早上がりが早上がりにならない
  • 勝手な残業が残業にならない
  • 打刻漏れが“管理不可能”になる

要は、**“ズルが見えない”**状態になります。
これ、会社として致命的です。

そして一番情けないのは、真面目な人が損をすることです。
真面目な人が損する会社は、必ず弱くなります。


人件費が上振れた時の原因は、結局この3つに集約できる

僕はいつもここに落とし込みます。
シンプルにした方が、現場が動くからです。

人件費(=時間)が上振れた時の原因は、結局この3つです。

  1. 売上予測のズレ(想定以上に来た/想定より来なかった)
  2. シフト設計のズレ(ピークに薄い/谷に厚い/役割設計が弱い)
  3. 労務管理のズレ(規律のズレ)(遅刻・早退・中抜け・残し放置・打刻漏れ)

で、今日のコラムで一番言いたいのは「3」です。
なぜなら、ここが崩れてる会社が多すぎるから。


「規律のズレ」は、予定(シフト)がリアルじゃないところから始まる

ここがポイントです。

勤怠管理が甘いって、単に“打刻が適当”って話じゃないんですよね。
もっと根っこは、

シフトが実態を表していない(リアルじゃない)

これです。

リアルじゃないシフトの典型はこう。

  • シフト入力してない(Excelだけ)
  • 一応入れてるけど、適当
  • 偉い人だけ例外がある
  • 厨房だけ別運用、みたいな謎ルールがある

こうなると、もう終わりです。
規律も不正検知もできません。


“ズレ”は2種類ある。ここを分けるだけで改善が回り始める

予定(シフト時間)と実績(打刻時間)の差は、方向で意味が変わります。

① マイナス乖離(シフト > 打刻)

「シフトは入ってるのに、打刻が少ない」
これ、よく見ると“シフトがリアルじゃない”ことが多いです。

  • 本当は10時出勤なのに、9時で入れてる
  • なんとなく早めに入れてる
  • 実態と合ってない

つまり、管理の土台が崩れてるサインです。

② プラス乖離(打刻 > シフト)

「打刻がシフトを超えてる」
これが常態化してる店は、ほぼ確実に打刻運用が甘いです。

  • 早出しても誰も何も言わない
  • 本来退勤なのに残ってても誰も何も言わない
  • 打刻漏れを後で直す(直さない)
  • 残業が“なんとなく”承認される

これ、規律が崩れていきます。
そして最終的に利益が崩れます。


だから日次運用が必要:毎朝10分で“規律”と“改善”を同時に回す

人件費改善って、月次でやると遅いんですよね。
飲食は明日が勝負なので。

日次運用は、これだけでいいです。難しくしない。

Step1:前日の「シフト時間 vs 打刻時間」の差を出す

全店見なくていい。差が大きい上位だけ見る。

Step2:差を3分類する(予測/設計/規律)

  • 予測が外れたのか
  • 配置が外れたのか
  • 規律が崩れてるのか

ここに落とせば、打ち手が勝手に決まります。

Step3:店長に返すのは“説教”じゃなく“次の一手”

日次は、短く強く。

  • シフトがリアルじゃない → 実態に合わせて作り直す。例外なし。
  • 打刻が甘い → 早出/残しのルールを決める。放置しない。
  • 予測が外れた → 予測因子(予約・天気・イベント)を足す。
  • 配置が外れた → ピークに寄せる。谷を薄くする。

一覧表:斉田が“人件費の規律”で見ているポイント

観点崩れてる状態起きること直し方(設計)
シフトのリアリティ実態とズレてる/例外だらけ遅刻も中抜けも見えない実態通りに作る(偉い人ほど例外なし)
打刻の厳密さ漏れ放置/申請依存/ゆるい“やったもん勝ち”が生まれる打刻ルールを固定・即日修正
プラス乖離早出・残しが黙認ムダ残業が積み上がる早出許可/残し理由の必須化
マイナス乖離シフトが形骸化そもそも管理できないシフト運用の再設計

TEAL BIでやりたいこと:人件費を「削減」から「統制」に戻す

TEAL BIの狙いは、派手なグラフじゃないです。
日次で“ズレ”を見つけて、潰して、規律と利益を作る。これです。

人件費が強い会社は、特別な才能があるわけじゃない。
運用が強いだけです。

そして運用は、仕組みで作れます。


まとめ:規律がないと、緻密な人件費管理はできない。だから利益が出ない

最後に、もう一回だけ結論を言います。

  • シフトは実態通りに作る(例外を作らない)
  • 打刻は厳密に運用する(遅刻が見える仕組みを作る)
  • 差異を日次で潰す(チリを山にしない)

これができると、人件費は“削る”じゃなく“整える”で下がります。
そして現場も壊れません。利益も残ります。

飲食は結局、人が作る産業です。
だからこそ、規律が会社の強さになります。


付録:店長に刺さる“短い返し”テンプレ(規律を作る言い方)

  • 「まずシフトを実態に合わせよう。ズレてる限り遅刻も中抜けも見えない」
  • 「例外は偉い人から崩れる。だから例外をなくす」
  • 「早出と残しは“理由がある時だけ”。黙認しない」
  • 「打刻漏れは当日中に直す。翌日に持ち越さない」

投稿者プロフィール

斉田 教継
斉田 教継株式会社ラックバッググループ 代表取締役CEO
新卒で産業機械メーカーに就職。インドで単独での市場開拓を経験。その後、ドイツ商社、外資系生命保険会社で経験を積み、2007年にラックバッググループ共同創業。飲食企業経営をしながら、2020年、飲食業界向け売上管理&分析システムTEAL BIを立ち上げる。飲食経営者兼、飲食業界DX開発者でもある。