飲食の“数字が合わない問題”は、経営のスピードを殺す

TEALが「POSの奥のRAWデータ」から管理会計を作る理由

飲食企業の経営で、いちばん怖い“怪談”は何か。

売上が落ちることでも、人が辞めることでもない。僕は 「社内の数字が合わない」 ことだと思っています。

  • 店舗が見ている日報の売上
  • 本部が作っているExcelの売上
  • 会計が持っている売上
  • 売上管理システムが出してくる売上

……全部「売上」なのに、微妙に違う。

この状態が起きると、経営会議は“意思決定の場”ではなく“調停の場”になります。

「で、結局どれが正しいの?」

「その前提が揃わないと判断できない」

「じゃあ来月から直そう」

——こうして、改善の初速が死ぬ。

TEALが狙っているのは、ここです。

ダッシュボードを派手にする話ではなく、経営が前に進むための“同じ地図”を作る こと。

そして、その地図は「日計」ではなく POS/OESの“取引データ(トランザクション)” から作られるべきだ、という立場です。

なぜ「日計集計」では、管理会計が壊れるのか

多くの飲食企業は、日計集計(いわゆるZや日報)をデータの起点にしています。


理由は簡単で、取りやすいし、軽いし、帳票っぽいからです。


でも、日計が起点になると、次の3つが構造的に起きます。

1) 定義の揺れが吸収できない(=“売上”が方言になる)

POSごとに、同じ日本語でも中身が違うことがあります。
「純売上」「総売上」「値引」「金券」「取消」「赤黒処理」——この辺りは特に地雷です。
日計の段階では、すでにPOS側の都合で“丸められた結果”になっているため、後から直しようがない
つまり、日計を集めている限り、経営は“POSの方言”に支配されます。

2) 「なぜ増減したか」が説明できない(=原因が見えない)

日次で「前年差-5%」が出たとき、必要なのはグラフではなく原因です。

  • どの時間帯が落ちたのか
  • どのカテゴリが落ちたのか
  • 値引きが増えたのか、キャンセルが増えたのか
  • 客数が落ちたのか、客単価が落ちたのか

日計は“結果”なので、深掘りのためにまた別集計を作り始め、Excel地獄が再発します。

3) 現場に効く粒度(30分・メニュー・支払)に落とせない

飲食は、工場と違って「波」が本体です。
同じ日売上でも、ピークの形で利益は変わる。

  • 18:00〜19:00に60%が来る店
  • 17:00〜22:00に薄く長く来る店

この差は、必要人員も、キッチンの詰まり方も、提供時間も、クレーム率も変えます。
つまり 時間帯×客数×滞在 を見ないと、利益改善は“気合”になります。

TEALの結論:経営の土台は「辞書」ではなく「通訳」

標準フォーマット(規格)は、とても大事です。

でも、規格があるだけでは現場は変わりません。

なぜなら、規格は“辞書”であって、現場のデータは“方言”だからです。

辞書だけでは会話は成立しない。必要なのは 通訳 です。

TEAL GATEWAY がやっているのは、この通訳業です。

  • POS/OESが出す RAWの取引データ を受け取る
  • 伝票(ヘッダ)・明細(アイテム)・支払(テンダー)など、経営に使える構造に組み直す
  • 取消・値引・赤黒処理などの“現場のクセ”を踏まえて、意味として整合する形に変換する
  • 日計と突合して、毎日「合っている」状態を担保する

ここまでやって初めて、BIが“経営の計器”になります。

逆に言えば、この手前がグラグラのままBIを入れると、「綺麗に見えるけど嘘」 が出来上がってしまう。

TEAL BIが「30分」「日次PL」「予実」にこだわる理由

TEAL BIの狙いは、「分析者を増やすこと」ではなく、意思決定できる人を増やすこと です。だから、専門スキルがなくても“流し見”で異常に気づける設計を重視しています。

そして、飲食経営で効くのは、だいたい次の3つです。

A) 30分単位で、現場の詰まりを可視化する

30分で見ると、現場のボトルネックが「形」として出ます。

  • ピークが尖りすぎている → 配席 / 予約 / 仕込み / 人員が合ってない
  • ピークは大丈夫だが、谷が深い → 販促 / 営業時間 / 近隣要因の問題
  • 滞在人数だけが増える → 提供遅延 or 客層変化 or 席運用の問題

日次・週次では絶対に見えないタイプの“病巣”が、30分だと見えます。

B) 日次PLで「数字の反応速度」を上げる

月次PLは制度会計として重要ですが、飲食の現場改善には遅い。

「前月の反省」をしている間に、今月も同じ事故が起きるからです。

日次で、売上・人件費・仕入(原価)を並べて見られると、経営の反射神経が変わります。

  • 人件費が上振れ → シフト設計と打刻の差分を疑う
  • 原価が上振れ → 仕入単価 or ロス or 売れ筋変化を疑う
  • 売上が上振れ → 人員不足で取りこぼしてないか疑う

「原因→仮説→手当」が、翌日回り始めます。

C) 予実を“日次で”追える会社は強い

予算は、当てるゲームではなく、運用する技術 です。

日次で追えると、予算は「月末に見て落ち込む数字」から、「毎日ハンドリングする数字」になります。

TEALの思想はここで、単に値上げしろ、販促しろ、とは言いません。

“何が起きているか”が見える状態を作り、現場と本部が自分で考えて手を打てるようにする。

その方が、組織が強くなるからです。

まとめ:TEALが提供しているのは「ダッシュボード」ではなく「経営OSの土台」

TEALの価値を一言で言うなら、こうです。

分断された現場データを、経営判断に耐える“共通言語”へ変換すること。
そのうえで、30分・日次PL・予実という“効く粒度”で、意思決定を加速させること。

そして、この価値は経営者だけでなく、情シスにも刺さります。
なぜなら、TEALは「基幹システムを置き換える」のではなく、各SaaSや会計の間をつなぐ中間層(データハブ) として設計できるからです。

  • POS、勤怠、仕入、予約などは、それぞれ優れたSaaSを活かす
  • TEALがデータを統合・クレンジングして“正しい集計”を作る
  • 必要なら、その集計を会計・基幹にも渡す
  • BIは“結果”ではなく、“運用の武器”として使う

飲食は、現場が主役の産業です。
だからこそ、現場の努力が報われるように、経営の計器は“正しく”なければいけない。
TEALは、その当たり前を、ちゃんと実装するためのプロダクトです。

要点一覧表(経営者・情シスが押さえるべきポイント)

よくある症状(現場) 根っこ原因(構造) TEALの打ち手 経営インパクト
数字が合わず会議が荒れる データ定義がPOS/部署でバラバラ RAW取引データを共通モデルへ変換+日計突合 意思決定が速くなる/責任の所在が明確になる
月次でしか手が打てない 粒度が荒い(=日計起点) 30分・日次PL・予実の標準化 “翌日改善”が回る
店舗ごとの改善が属人的 気づきを作る仕組みがない 流し見UX+異常値が出る設計 マネージャー層が育つ
POS入替やM&Aで統合不能 ベンダーロックインとフォーマット地獄 Gatewayが“通訳”として吸収 システム選定が自由になる
情シスが連携保守に疲弊 連携が個別開発の寄せ集め データハブ化(API/FTP/CSV) 維持コストが下がる/拡張が楽になる

投稿者プロフィール

斉田 教継
斉田 教継株式会社ラックバッググループ 代表取締役CEO
新卒で産業機械メーカーに就職。インドで単独での市場開拓を経験。その後、ドイツ商社、外資系生命保険会社で経験を積み、2007年にラックバッググループ共同創業。飲食企業経営をしながら、2020年、飲食業界向け売上管理&分析システムTEAL BIを立ち上げる。飲食経営者兼、飲食業界DX開発者でもある。