電子レシートが普及しない“構造”と、OFSCゲートで「実装する」意味

冒頭の例話:仕様は立派。でも、現場は1ミリも動かなかった

飲食チェーンの本部で、こんな会話が起きます。

「電子レシート、やりたいよね。うちもDXって言ってるし」
「仕様書もあるらしいし、いけるんじゃない?」
「……で、誰が実装するの?」

ここで現実が顔を出します。

  • うちは1社のPOSだけじゃない。ブランドごと、店舗ごとにPOSが混在してる
  • モバイルオーダーもある
  • 既存システム(会計・基幹・CRM)にもつなぎたい
  • でも、POSベンダー各社に「この仕様を実装してください」とお願いして回ると、コストも時間も重い
  • 結果、「仕様は立派だけど普及しない」未来が見える

この瞬間に、電子レシートは“紙の仕様書”として棚に眠ります。
私はこれを、何度も何度も見てきました。

だから私は、最初から結論をこう置いています。

電子レシートは「仕様を作る」だけでは普及しない。
普及のボトルネックは “実装主体が不在” である。


電子レシートが普及しない理由は、技術の難しさより“構造”にある

電子レシートが普及しない理由を、私はシンプルに3つに分解しています。

1) 仕様があっても「POSが出せなければ」現場は使えない

仕様は“こうあるべき”を示すだけで、実装は別物です。
POSが動かなければ、レシートは出ません。現場は何も変わりません。

2) POSの世界は「一社統一」ではない(複数混在が当たり前)

外食チェーンの現実は、1社のPOSに揃っていない。混在している。
この状態で「各社に個別実装をお願いする」は、現実的ではありません。

3) “誰がつなぐか”が空白だと、普及は止まる

電子レシートを普及させるには、結局「POS ↔ 電子レシート/データレイク」を誰かがつながないと動かない。
ここが空白のままだと、普及は止まります。


私の整理:電子レシートは「単独規格」じゃない。標準トランザクションの“出口”だ

ここが、私がずっと言い続けている核心です。

電子レシートって「紙レシートの代替」じゃない。
本質はデータ取得のための仕組みであり、目的はビッグデータ構築とID-POS連携(CRM)です。

そして構造としては、こう考えるのが一番筋が良い。

  • 上位に「トランザクション標準データ(外食標準データ)」がある
  • 電子レシートは、その一部を「お客様に渡すスナップショット」として切り出した“出口形式”である
  • トランザクション側は取消・再精算など“ログ寄り”まで持ち得るが、電子レシートは会計確定後のスナップショット

だから私はこう整理しています。

「大きな集合:OFSC標準トランデータ」
その中に「電子レシート相当部分」が内包される、が一番しっくりくる。

この整理にすると、電子レシートの設計が急に“強く”なります。
なぜなら、電子レシート単体を作るのではなく、標準トランザクションが整えば電子レシートの出力は自然に生成できるからです。


「標準化=紙の仕様書」から、「標準化=実装まで含めたインフラ」へ

ここで次の壁が出ます。

「よし、上位集合として標準トランザクションを作ろう」
「電子レシートはその出口として内包しよう」
……で、誰が実装する?

私はここで、はっきり言っています。

  • POSメーカーに「全部やってください」とお願いして回るのは現実的ではない
  • だからPOS側には“今まで通り自社フォーマットのトランザクション/ジャーナル”を出してもらうだけでいい
  • その先の「標準化」と「電子レシートAPI化」は、OFSCゲートウェイ側で引き受ける

この設計は、普及の最大ボトルネック(実装主体の不在)を外すためのものです。

電子レシート普及のために、POSメーカーの開発を待つ必要はない。
OFSCゲートウェイで変換し、そこから電子レシートを生成する。

つまり「標準化」を“紙の仕様書”で終わらせない。
実装まで含めて標準化を完結させる。これがOFSCゲートの思想です。


OFSCゲートウェイが「実装側」を持つと、何が起きるか

私はこの設計を、ビジネス的にも技術的にも合理だと思っています。理由は3つ。

1) POSベンダーの負担を最小化できる(普及が早い)

「また新しい仕様対応か…」という負担からPOSベンダーを解放できる。
求めるのは、基本的に「データ出力の窓口を開ける」ことだけ、という役割分担にできる。

2) ユーザー企業は“POS混在でも一気通貫”で手に入る

POSが混在していても、標準データ+電子レシート出力を一気通貫で手に入れられる。
ここが、現場の導入のしやすさに直結します。

3) 電子レシートは「出口の一つ」として自然に位置づく

電子レシート仕様を、OFSC標準データ空間の“出口の一つ”として自然に組み込める。
この「内包」の思想があるから、標準が拡張しても矛盾しにくい。


外食にとっての価値は“紙の置き換え”じゃない。CRM/ID-POSの入口だ

もう一つ、私は強く言っていることがあります。

外食にとって電子レシート単体は普及しにくい。
本当に欲しいのはCRMであり、レシートはその一部に過ぎない。

電子レシートが“出口”として整うと、何が起きるか。
顧客単位・商品単位でデータを統合する鍵になる。
つまり、会員アプリ、家計簿、金融、ポイント、予約、モバイルオーダー……あらゆる周辺サービスが繋がり始める。

そして、その入口を「普及する形」で用意するのが、ゲートウェイを実装側に置く意味です。


まとめ:普及の正体は「仕様」ではなく「実装主体」だ

最後に、このコラムを一行で締めます。

電子レシートが普及しない理由は、仕様が弱いからじゃない。
“実装主体が不在”という構造が、普及を止めている。

だからOFSCは、仕様書で終わらせない。
標準の実装まで担う。実装がないと普及しないから、我々が実装する。

そして、電子レシートは単独規格ではなく、
OFSC標準トランザクションの「内包された出口」として扱う。

この順番で設計すると、標準化は“紙”から“社会実装”に変わります。


投稿者プロフィール

斉田 教継
斉田 教継株式会社ラックバッググループ 代表取締役CEO
新卒で産業機械メーカーに就職。インドで単独での市場開拓を経験。その後、ドイツ商社、外資系生命保険会社で経験を積み、2007年にラックバッググループ共同創業。飲食企業経営をしながら、2020年、飲食業界向け売上管理&分析システムTEAL BIを立ち上げる。飲食経営者兼、飲食業界DX開発者でもある。