【コラム5】SaaSを「今の業務に合わせてねじ曲げる」と、DXは必ず詰む 投稿者: 斉田 教継2025年12月25日2025年12月25日お知らせ ある企業で、新しいSaaS型の売上管理システムを導入したときの話です。最初の打ち合わせで、現場からこう要望が出ました。 「いま使っているExcel帳票と、完全に同じレイアウトにしてほしい」「この“謎の補正列”も、そのまま再現してほしい」 気持ちはよく分かります。人は「慣れた形」が安心です。 でも、その結果どうなったか。 SaaSの標準画面は完全に無視され カスタマイズと追加開発で、昔のExcelを再現する作業に追われ 導入後のアップデートのたびに不具合が起きる“カスタマイズ地獄”になりました 1. SaaSは「型」に寄せるから価値が出るSaaSは本来、何百・何千という企業の業務フローを抽象化した「こう組むと、だいたいうまく回る」という“業界標準の型”です。つまり、SaaS側には「ある程度、洗練された業務の前提」が埋め込まれています。DXとは、本来この「型」に寄せていくプロセスでもあります。いまの業務フローを絶対視するのではなく、一度解体して、SaaSの型に寄せられる部分は寄せていく。これをやるからこそ、システムはシンプルになりアップデートにもついていきやすくなりデータ構造も標準化され他システムとの連携もしやすくなるというメリットが出てきます 2. 「うちのやり方に合わせて」という魔法の言葉 ところが飲食業界では、「現場を守る」という名目のもとに、次のようなことが起きがちです。 「うちの店は昔からこのやり方だから」 「この帳票だけは絶対に残してほしい」 「この数字の出し方じゃないと、現場が混乱する」 結果として、 SaaS側を“昔の業務フロー”に合わせてねじ曲げ 標準機能が持っていた良さを、自ら殺し さらにカスタマイズによって技術的負債を積み上げていく という、本末転倒な状態になります。 3. 業務を守るために、会社が死ぬ 「現場のやり方を守る」こと自体が悪いわけではありません。問題は、その守り方です。 短期的な安心のために、長期的な柔軟性を捨てていないか 一部のベテランに合わせすぎて、組織全体の成長を止めていないか 「昔のやり方」を絶対視することで、若手の発想を押さえつけていないか 業務を守ろうとして、結果的に会社の未来の選択肢を奪ってしまう。 これが、SaaSねじ曲げ文化の一番怖いところです。 4. 「業務を変えるDX」へ踏み込む勇気 ティールとしてご一緒するときは、ここに踏み込まざるを得ない場面が必ず出てきます。 「この列は、本当に必要ですか?」「この手作業は、どこかの段階で“やめる決断”をしませんか?」 これは、単に機能の話ではなく、「業務の前提を変える」という、かなり痛みを伴う話です。 ですが、ここに踏み込まず、 「SaaSを昔の業務に合わせてカスタマイズする」方向に逃げてしまうと、DXはほぼ確実に途中で詰みます。 DXは、ツール選びではなく「業務設計の再定義」です。SaaSの標準に寄せる覚悟が持てるかどうかが、最初の大きな分岐点になります。 投稿者プロフィール 斉田 教継株式会社ラックバッググループ 代表取締役CEO 新卒で産業機械メーカーに就職。インドで単独での市場開拓を経験。その後、ドイツ商社、外資系生命保険会社で経験を積み、2007年にラックバッググループ共同創業。飲食企業経営をしながら、2020年、飲食業界向け売上管理&分析システムTEAL BIを立ち上げる。飲食経営者兼、飲食業界DX開発者でもある。 最新記事 お知らせ2026年1月15日【POSレジの選び方:第3回】結局、POS選びは“保守・復旧・データ連携”で決まる。運用モデルで最適解を作る お知らせ2026年1月14日【POSレジの選び方:第2回】POSが落ちる“本当の理由”はWi-Fiだった。ネットワーク設計が運用を決める お知らせ2026年1月13日【POSレジの選び方:第1回】「安いからタブレットへ」の前に。乗り換えで必ず起きる“現場の摩擦”と、その設計 お知らせ2026年1月2日電子レシートが普及しない“構造”と、OFSCゲートで「実装する」意味