【コラム4】「ベンダーロックイン」より厄介な、「情シスロックイン」という病 投稿者: 斉田 教継2025年12月24日2025年12月21日お知らせ ある飲食企業で、長年情シスを担当してきたベテラン社員の方と話をしました。年齢は60代目前。穏やかな口調で、でも本音ではかなり追い込まれていました。「自分がいなくなったら、この会社のシステムを誰も触れないと思います」「だから、辞めたくても辞められないんです」 よく聞く「ベンダーロックイン」よりも、正直こちらの方がはるかに危険です。 1. こうして「情シスロックイン」は生まれる情シスロックインは、次のような流れで静かに進行します。社内でITに詳しい人が、自然と情シス担当として任命される現場や役員からの細かい要望に、何年もかけて真面目に応え続けるベンダーとも“裏配線”のようなカスタマイズを積み上げる気づけば、「あの人以外、何がどうつながっているか分からない」状態になるベンダーに問い合わせても、「その設定は御社独自カスタマイズなので、社内の情シスご担当に…」と返されてしまう。中の構造は、本人の頭の中にしかない。 これが、情シスロックインです。 2. 経営視点から見ると「中枢機能の人質化」経営の視点で見ると、これはかなり危険な状態です。売上・在庫・人件費・顧客情報など、会社の“血液”とも言えるデータが個人の頭の中のルールに依存している情報システムという中枢機能が、最も危険な「属人」という場所に置かれているつまり、会社の心臓と血管の設計図を、一人の個人が握っているわけです。 その人が病気になったり、突然辞めたりしたときのインパクトは、本来であれば「経営リスク」として真剣に評価されるべきレベルです。 3. 「辞められない人」を作ってしまう罪本人も苦しみます。責任感が強いほど、「自分が辞めたら会社に迷惑がかかる」と感じるでも、構造的にはもう限界に来ているSaaSに移したい・標準化したいと思っているのに、日々の「便利屋仕事」に追われて手を付けられない結果として、「情シスの◯◯さんは、定年になっても辞めないらしい」 という“伝説的人物”が生まれます。それは個人の美談ではなく、構造としては完全に危険信号です。 4. 情シスロックインを解く3つのステップ ティールとしてご一緒するときは、このロックインを解くために、だいたい次の3ステップを提案します。 システム全体図の可視化 すべての主要システムとデータの流れをA3一枚に描き出す 「誰も見たことがない全体像」を、まず“絵”にする 暗黙知のドキュメント化 長年のカスタマイズ仕様 特殊なマスタ管理のルール エラーが出たときの“裏ワザ” SaaS・標準基盤への段階的な移行計画 一気にゼロから作り直すのではなく、「ここから順に標準化していく」というロードマップを引く 「◯◯さんがいないと回らない」状態から、「◯◯さんがいなくても回るが、いるともっと強くなる」状態へ。 ここまで来て初めて、情シス担当も“会社も”楽になり、DXが「人に依存しない仕組み」として機能し始めます。 投稿者プロフィール 斉田 教継株式会社ラックバッググループ 代表取締役CEO 新卒で産業機械メーカーに就職。インドで単独での市場開拓を経験。その後、ドイツ商社、外資系生命保険会社で経験を積み、2007年にラックバッググループ共同創業。飲食企業経営をしながら、2020年、飲食業界向け売上管理&分析システムTEAL BIを立ち上げる。飲食経営者兼、飲食業界DX開発者でもある。 最新記事 お知らせ2026年1月15日【POSレジの選び方:第3回】結局、POS選びは“保守・復旧・データ連携”で決まる。運用モデルで最適解を作る お知らせ2026年1月14日【POSレジの選び方:第2回】POSが落ちる“本当の理由”はWi-Fiだった。ネットワーク設計が運用を決める お知らせ2026年1月13日【POSレジの選び方:第1回】「安いからタブレットへ」の前に。乗り換えで必ず起きる“現場の摩擦”と、その設計 お知らせ2026年1月2日電子レシートが普及しない“構造”と、OFSCゲートで「実装する」意味