【コラム3】「システム代が高い・人件費が安い」は、インドの工場と同じ発想 投稿者: 斉田 教継2025年12月23日2025年12月21日お知らせ 若いころ、私は産業機械を売る仕事でインドに通っていました。自動化ラインの提案をしていて、現地の工場オーナーからこんな言葉を何度も聞きました。「機械より、人を床に並べた方が安い」工場の床に、作業員がぎっしり座っている光景を前に、オーナーは真顔でこう続けます。「自動化設備を入れるより、人を増やせばいい。インドではその方がコストが安いんだ」 このときの感覚が、いま日本の飲食企業でDX相談を受けるときに、何度もフラッシュバックします。 1. 「人を1人つけた方が安い」という計算式の危うさ 飲食企業でDXの話をすると、よくこう言われます。 「この業務、システムを入れると月◯万円ですよね」 「だったら人を1人つけた方が安い。システムは贅沢だ」 一見、冷静なコスト計算に見えます。ですが、この計算式には 「見えていないコスト」 が山ほど抜けています。 例えば、 その人が辞めたときの採用・教育コスト 忙しい時期にこぼれている作業と、その機会損失 手作業ゆえのミスと、それに伴うやり直し 店舗数が増えたとき、「人を増やす以外の選択肢がない」構造 こういった要素は、多くの場合「コスト」として数字に載ってきません。 2. 「安く見える」のは、時間軸が短すぎるからDX投資は、本来 3〜5年スパンで考えるもの です。仮に月30万円のシステム費がかかるとしても、3年でつくる価値は?5年後の店舗数を何店舗に増やしたいのか?そのとき、今と同じ“人海戦術”で本当に回るのか?こういう問いを一緒に置かないと、投資判断としては完全に片目をつぶった状態です。逆に言えば、「来月・再来月のコスト」だけで判断するから、DXがいつまでたっても“贅沢品扱い”から抜け出せない。 ということでもあります。 3. DX投資の本当のリターンはどこに出るか DX投資のリターンは、単純な「人件費削減」にとどまりません。 データが揃うことによる、経営判断の精度向上 店舗数が増えても、「人を同じ割合で増やさなくて済む」構造 クオリティコントロールの安定化(人によるバラつきを減らす) 属人化からの脱却(誰が辞めても回る仕組み) これらは、短期の試算だけではなかなか数字になりません。しかし、5年・10年のスパンで見ると、とんでもなく大きな差になります。 4. 人件費比較から、「総コストと伸びしろ比較」へDXの投資判断をご一緒するときには、必ずこうお話しします。「人件費 vs システム費」で比較すると、DXは一生“負け続け”ます。比較すべきは、「総コスト」と「伸びしろ」です。今の運用を続けた場合の総コストDXをした場合の総コストその差額と、得られる伸びしろ(店舗拡大・業態転換・分析力) この視点を持てるかどうかが、「DXが贅沢かどうか」ではなく、「DXが生き残りに必要かどうか」 という問いに変わる起点になります。 投稿者プロフィール 斉田 教継株式会社ラックバッググループ 代表取締役CEO 新卒で産業機械メーカーに就職。インドで単独での市場開拓を経験。その後、ドイツ商社、外資系生命保険会社で経験を積み、2007年にラックバッググループ共同創業。飲食企業経営をしながら、2020年、飲食業界向け売上管理&分析システムTEAL BIを立ち上げる。飲食経営者兼、飲食業界DX開発者でもある。 最新記事 お知らせ2026年1月15日【POSレジの選び方:第3回】結局、POS選びは“保守・復旧・データ連携”で決まる。運用モデルで最適解を作る お知らせ2026年1月14日【POSレジの選び方:第2回】POSが落ちる“本当の理由”はWi-Fiだった。ネットワーク設計が運用を決める お知らせ2026年1月13日【POSレジの選び方:第1回】「安いからタブレットへ」の前に。乗り換えで必ず起きる“現場の摩擦”と、その設計 お知らせ2026年1月2日電子レシートが普及しない“構造”と、OFSCゲートで「実装する」意味