【コラム2】ドラえもん扱いされる情シスと、「ツギハギ建築」の会社システム

ある飲食チェーンの本部に伺ったときのことです。
情シス担当のデスクの周りには、壊れた端末とルーターとケーブルの山。
電話は鳴りっぱなしで、内容はこんな感じでした。

「レジのプリンターが出なくなりました!」
「このExcel用に、明日までに特別集計ほしいです!」
「店舗Wi-Fiが遅いんだけど!」

 

端的に言うと、その担当者は “社内のドラえもん兼用務員さん” になっていました。
でも、話を聞くと、本当に危ないのはそこではありませんでした。

1. 設計図のないまま増築を続けた「ツギハギ建築」

多くの飲食企業で、情報システムはこんな歴史を辿っています。

  1. 最初は、シンプルなPOSと簡易的な売上管理からスタート

  2. その時々の事情で、勤怠システム・予約台帳・在庫管理などを順番に導入

  3. 現場や役員の要望に応じて、レポートや帳票、カスタマイズが少しずつ増えていく

このプロセス自体は、どの会社でも自然な流れです。
問題は、その間ずっと、

  • システム全体の“設計図”が描かれていない

  • 「5年後の姿」を見据えた設計思想がない

という状態で進んでしまうことです。

結果として出来上がるのは、

  • 設計図なしで、増築と増築を重ねた建物

  • 2階を支える柱の位置を誰も説明できない家

  • 排水・配線が迷路のようにつながっていて、触るのが怖いインフラ

 そんな「ツギハギ建築」です。

2. 情シスの仕事が「雨漏り修繕」と「電球交換」に埋まっていく

ツギハギ建築が進むほど、情シスの仕事はどんどん“末端化”していきます。

  • 「プリンターが出ない」

  • 「ユーザー追加してほしい」

  • 「あの帳票のこの列に、項目を1つ足して」

といった 「目の前の困りごと」 の対応に追われ続ける。

本来、情シスがやるべきは、

  • 全体構想の設計

  • データ構造・連携の設計

  • ベンダー選定・投資配分といった“経営寄りのテーマ”

のはずです。

ところが現実には、

「建物の構造を見直す時間も権限もないまま、
ひたすら雨漏りの補修と電球交換だけをやらされている」

 という状態になりがちです。

3. 情シスを「建築士のポジション」に戻す

私がいつもお伝えしているのは、

情シスを「便利屋」から「建築士」に戻さないと、DXは本当に進まない

ということです。

そのためには、経営側がまず、

  • 情シスの役割定義を変える

  • 「雨漏り修繕」は業務委託やヘルプデスクに逃がす

  • 情シスには「設計と標準化」に集中してもらう

という方向に舵を切る必要があります。

システムの世界では、

「構造の問題は、運用の努力では解決しない」

という鉄則があります。

ツギハギ建築の上で、
どれだけ情シスが汗をかいても、
建物そのものは、いつか耐えられなくなります。

 

情シスを「ドラえもん扱い」している企業ほど、
実は一番大事な“設計と構造”に手が回っていません。

投稿者プロフィール

斉田 教継
斉田 教継株式会社ラックバッググループ 代表取締役CEO
新卒で産業機械メーカーに就職。インドで単独での市場開拓を経験。その後、ドイツ商社、外資系生命保険会社で経験を積み、2007年にラックバッググループ共同創業。飲食企業経営をしながら、2020年、飲食業界向け売上管理&分析システムTEAL BIを立ち上げる。飲食経営者兼、飲食業界DX開発者でもある。