ある上場クラスの外食企業の経営会議に呼ばれたときのことです。
最新のクラウドシステムも、店舗アプリも、一通りは導入されています。
でも、会議が始まると出てくる言葉はこうでした。
「データはたくさんあるんだけど、結局“感覚”でしか判断してない」
「どのシステムが本丸で、何を見ればいいのか分からない」
「現場からは“ITに振り回されている”という声ばかり上がってくる」
技術的には“進んでいるように見える”のに、
経営と現場には、DXの成果がほとんど届いていない。
この違和感の正体は何か。
私は、ティールテクノロジーズの代表として多くの事例を見てきて、
次のように整理しています。
DXが進まない理由は「ITが苦手だから」ではない
多くの飲食企業で共通しているのは、実は技術力ではありません。
構造的な歪みです。
代表的なものを挙げると、こんな感じです。
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情報システム部門・担当者に「戦略」と「権限」がない
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「システム代は高い・人件費は安いからDXは贅沢」という思考回路
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ベンダーロックインだけでなく、「情シスロックイン(担当者ロックイン)」
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情シスに丸投げしているのに、責任も権限も与えられず、導入初期トラブルで改革が潰される
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SaaSを「今の業務に合わせてねじ曲げる」結果、技術的負債と時代遅れを量産している
つまり本質は、
「ITがわからないから進まない」のではなく、
「会社の構造が、DXを拒むようにできている」
ということです。
2. 技術だけ入れ替えても、構造がそのままなら何も変わらない
極端な言い方をすると、
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どれだけ高機能なBIツールを入れても
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どれだけ有名なクラウドPOSを入れても
それを支える “経営と組織の設計図” が変わらない限り、
成果は一時的か、局所的なものにとどまります。
構造とは、例えばこういうものです。
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誰がIT投資の最終責任を負うのか
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情シス担当は「用務員」なのか、「設計者」なのか
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現場の声と中長期の戦略、どちらに最終的な優先順位を置くのか
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「人件費 vs システム費」ではなく、「総コストと伸びしろ」で判断できているか
この土台が変わらないまま、
「とりあえず新しいクラウドを一つ導入しよう」
という発想では、
DXは“高価なガジェット遊び”で終わってしまいます。
3. 飲食DXで本当に問うべきこと
ティールテクノロジーズとして、私は各社と話すときに必ずお聞きするのが、
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「5年後に、どのくらいの店舗数・売上規模を想定していますか?」
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「そのとき、いまのシステム構成のままでも回りますか?」
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「システムが変わることで、業務をどう変えますか?」
という、**“構造の問い”**です。
DXは、
「便利そうなツールを足していくこと」ではありません。
「会社の構造、仕事の構造を、デジタル前提で組み替えること」
です。
そのスタート地点に立てているかどうか。
そこが、飲食企業のDXの成否を分ける一番大きなポイントだと感じています。
4. このシリーズで伝えたいこと
このあと続く6本のコラムでは、
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ドラえもん扱いされる情シス
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「システム代が高い・人件費が安い」という発想
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情シスロックイン(担当者ロックイン)
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SaaSをねじ曲げる文化
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責任と権限のねじれ
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DXを“贅沢品”から“経営インフラ”に変えていく視点
などを、それぞれの切り口から深掘りしていきます。
どれか一つでも「心当たりがありすぎる…」と思ったら、
そこがまさに、自社のDXの“つまづきポイント”だと考えてもらえると良いと思います。
ティールの斉田として、
現場と経営の両方を見てきた立場から、
できるだけ具体的に、でも本質は外さない形でお伝えしていきます。
投稿者プロフィール

- 株式会社ラックバッググループ 代表取締役CEO
- 新卒で産業機械メーカーに就職。インドで単独での市場開拓を経験。その後、ドイツ商社、外資系生命保険会社で経験を積み、2007年にラックバッググループ共同創業。飲食企業経営をしながら、2020年、飲食業界向け売上管理&分析システムTEAL BIを立ち上げる。飲食経営者兼、飲食業界DX開発者でもある。
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