【結論】原価が「だいたい」で止まる原因は、たいてい2か所に集まっています。自家製のたれや仕込み品の中身が分解されていないことと、歩留まりが入っていないことです。メニューPlusのレシピを取り込むときに、仕掛品は仕入れた商品まで下ろし、歩留まりを掛け戻す。この2つをやって初めて、レジの販売数から「実際に使ったはずの量」が出ます。この記事は、その分解の中身と、いまどこまで動いているのかを書いたものです。
【この記事でわかること】
・自家製のたれの原価が、なぜ誰にも出せないのか
・仕掛品を、仕入れた商品まで下ろすとはどういうことか
・歩留まりを入れないと、原価がどれくらいずれるのか
・メニューPlusのレシピと、レジをつなぐために必要な2つの紐付け
・いま動いていることと、これからのことの線引き
自家製のたれの原価は、作った人しか知りません
多くの企業で、看板メニューの味を決めているのは自家製の仕込み品です。焼肉のたれ、ラーメンのかえし、ドレッシング、合わせ調味料。これらはレシピ上「たれ15g」と書かれていて、そこで止まっています。
止まっているので、原価計算のときに困ります。たれ1gがいくらなのかを知っている人が、社内に1人か2人しかいません。仕込みを担当している方の頭の中にはありますが、数字として置かれていないので、原価表を作る人はだいたいの値を入れることになります。
そして仕込み品ほど、中身の単価が動きます。醤油も、みりんも、砂糖も値上がりします。たれ1gの原価を最後に計算したのがいつなのか、たいてい誰も覚えていません。いちばん使う量が多くて、いちばん更新されていないのが仕込み品です。
もう1つの「だいたい」が、歩留まりです
買った量と、料理に使える量は違います。皮を剥き、筋を取り、骨を外し、解凍すればドリップが出て、煮詰めれば減ります。この差が歩留まりです。
ここを入れないと、原価はきれいに過小評価されます。歩留まりが70%の食材を100g使う料理なら、実際には約143g仕入れています。歩留まりを見ないまま100gぶんで原価を置くと、その食材の原価は3割低く出ます。原価率が実態より良く見えて、なぜ利益が残らないのかが説明できなくなります。
やっかいなのは、この誤差が商品ごとに違うことです。加工の少ない商品はほぼ合い、下処理の多い商品ほど大きくずれます。全体では「なんとなく合っている」のに、商品単位では当てにならない——原価表が使われなくなっていく理由の多くがこれです。
レシピは登録してあるのに、原価計算に使えていません
ここまでの2つは、レシピが無いから起きているのではありません。レシピはすでに登録されているのに、原価計算に使える形になっていない、という話です。
レシピは調理の再現のために作られています。「たれ15g」で止まっているのは、作る側にとってはそれで十分だからです。原価を出す側が必要としている「そのたれの中身」までは、同じ表に書かれていません。
私たちがやろうとしているのは、レシピの作り方を変えていただくことではありません。いま登録されているレシピを取り込んで、機械の側で下まで下ろすということです。現場の入力を増やす話ではありません。
仕掛品は、仕入れた商品まで下ろします
「たれ15g」で止めません
- 醤油 何g・何円
- みりん 何g・何円
- 合計が、たれ15gの原価
加工品を多く使う業態ほど、ここを飛ばすと数字が合わなくなります。
やっていることは按分です。たれの配合と出来上がり量が分かれば、たれ1gあたりに各材料が何g入っているかが出ます。あとはその材料の仕入単価を掛けるだけです。
仕込み品の中にさらに仕込み品が入っている場合——合わせ調味料の中に自家製の出汁が入っているような場合も、たどれるところまで展開します。ただし、その先の材料に仕入商品が紐付いていない場合は、その分だけ計算に入りません。どこで止まったかは分かる形にします。
歩留まりは、買った量に戻して計算します
同じレシピでも、原価が3割変わります
使った量 = 買った量として置く
- 下処理の多い商品ほどずれる
- 原価率は実態より良く見える
- 商品単位では当てにならない
使った量 ÷ 歩留まり = 仕入れた量
- 下処理のぶんが原価に乗る
- 商品ごとの誤差が揃う
- ロスの議論が別枠でできる
歩留まり70%の食材を100g使う料理なら、実際に仕入れているのは約143gです。
歩留まりはレシピ側に登録されている項目です。入っていればそのまま使いますし、入っていなければ100%として計算します。入っていない食材があっても止まりませんが、その食材については実態より低い原価が出ている、と分かる状態にしておきます。
レシピとレジをつなぐ、2つの紐付け
分解ができても、それがレジの販売数と結びつかなければ原価率にはなりません。必要な紐付けは2つで、どちらもマスタの作り替えではありません。
1つは、レシピの食材と、仕入商品の紐付けです。ここが空欄だと、その食材ぶんの金額が出せません。空欄が残っている場合は、直近の仕入実績と照合してこちら側で候補をお出しし、ご確認をお願いする形にしています。ゼロから手で埋めていただくものではありません。
もう1つは、レシピと、レジのメニューコードの紐付けです。レシピ側に「このレシピはレジのこの商品です」と登録する欄があるのですが、レシピだけを運用していてこの欄が空のまま、という企業が少なくありません。製品の制約ではなく、登録がこれからという状態です。
そして全部を一度に埋める必要はありません。売れている順に上から進めるのが現実的で、上位数十件を埋めた時点で売上の半分近くがカバーできます。まず仕込み品の多い主力商品から、というのが効きます。
メニューPlusからのレシピ取り込みは、どこまで終わっているのか
正直に書きます。この記事に書いた分解そのものは、取込と検証まで終わっています。実データで通ることは確認済みです。残っているのは、これを毎日の更新として本番で動かすところと、画面に出すところです。
ですので「申し込めば明日からたれの原価が出ます」とは受け取らないでください。いまお使いいただけるのは、日次の売上・人件費・仕入と、実際に計上された仕入にもとづく確定原価までです。
この分解が動いたあと何が見えるようになるかは別記事に書いています。原価表の維持そのものが不要になる話が 原価表の更新が2回目で止まる:レシピを直せば原価が追随する、原価と在庫を含めた5段階の全体像が 「棚卸をするまで在庫が分からない」を終わらせる:レシピ・仕入・販売を1本の線でつなぐ です。
実際に本番稼働している連携先
この記事は「何が動いていて、何がこれからか」を主題にしているので、連携先も同じ基準で出します。いま毎日データが流れているものだけを「本番稼働中」とし、そうでないものは分けて書きます。
| 区分 | 連携先 | 状況 |
|---|---|---|
| POSレジ | 東芝テック/スマレジ/USENレジ/NECモバイルPOS/ポスタス(POS+) | 本番稼働中 |
| ローズシステム/寺岡精工/funfo/Chompy(モバイルオーダー) | 本番稼働中 | |
| ステアリテール(FoodFrontia Pro)/グローリー/リブオン(宅配Evolution)/ダイニー | 接続対応中 | |
| 仕入 | インフォマート | 本番稼働中 |
| メニューPlus(レシピ) | 接続対応中 | |
| 勤怠・人事 | ジョブカン/King of Time/タッチオンタイム/SmartHR | 本番稼働中 |
| 予約・口コミ | Googleビジネスプロフィール/TableCheck/Instagram ※Instagramは一部の企業様で稼働中です |
本番稼働中 |
| 外部データ | 気象データ(全国・時間帯別) | 本番稼働中 |
| 上記以外 | ネットワーク未接続の店舗を含む | CSVアップロードで統合対象に含められます |
この表で「メニューPlus(レシピ)」が接続対応中になっているのが、この記事の主題そのものです。取込と突き合わせまでは終わっていますが、毎日の更新として本番で動かすのはこれからなので、この行についてだけは稼働の時期をお約束していません。
よくある誤解
「たれは一括で原価を入れておけば、分解までしなくてよいのでは」
一括で置くこと自体は可能ですが、置いた瞬間から古くなります。中身の醤油や砂糖が値上がりしても、置いた数字は動きません。しかも仕込み品は使用量が多いので、ずれたときの影響がいちばん大きいところに、いちばん古い数字が入ることになります。分解しておく意味は、値が動いたときに自動で追随することにあります。
「歩留まりを全商品ぶん調べるのは、現実的ではないのでは」
全部を調べる必要はありません。歩留まりが入っていない食材は100%として計算し、そのまま先に進みます。効くのは下処理の多い一部の食材だけなので、魚・肉・葉物といった大きいところから入れれば、精度の大半はそこで揃います。細かい調味料まで追いかける必要はありません。
「レシピを別のシステムで管理しているので、うちは対象外では」
レシピの置き場所が別のシステムでも、必要な項目(料理ごとの食材と使用量、仕掛品の配合と出来上がり量、歩留まり、仕入商品との対応)が揃っていれば、考え方は同じです。ただし現時点で日次の自動連携が用意できているのはメニューPlusで、それ以外は個別のご相談になります。まずどの項目をお持ちかをお聞かせください。
料金と、導入までの流れ
TEAL BIの料金は1店舗あたり月額8,000円(税抜)だけです。初期費用・導入費用・連携費用はいただいていません。日次の売上・人件費・仕入と、実際に計上された仕入にもとづく確定原価は、この料金の範囲で今日からお使いいただけます。オプション料金という考え方をしていません。
導入は、いまお使いのPOSレジと勤怠システムの構成をお聞きするところから始まります。すでに接続実績のあるものであれば、やり取りは短く済み、約1週間で稼働を開始できます。掲載していないものが混ざっている場合も多くは連携可能で、その際はメーカー様との打ち合わせのうえ新規の連携開発を行います。期間の目安は1か月程度です。いずれの場合も月額8,000円のままで、連携のための費用はいただきません。
一方で、この記事の主題であるレシピの取り込みと仕掛品の分解は、料金表に載る「機能」としてご案内できる段階にありません。いま申し込めば使えます、というご案内はしないことにしています。ご関心のある企業様とは、先行して検証にご参加いただく形でご相談させてください。
いまお使いいただける範囲の画面と機能をひととおりご覧になりたい場合は、サービス紹介資料(全10ページ)をご請求ください。フォームのご入力後、その場でダウンロードいただけます。
よくあるご質問
Q. たれの中に、さらに別の仕込み品が入っています。どこまで下ろせますか?
たどれるところまで下ろします。合わせ調味料の中に自家製の出汁が入っているような入れ子も展開します。止まるのは、その先の材料に仕入商品が紐付いていない場合だけです。どこで止まったかは分かる形にしますので、埋めるかどうかはそのうえでご判断いただけます。
Q. 歩留まりを登録していない場合、どうなりますか?
その食材は100%として計算します。計算が止まることはありません。ただし下処理の多い食材ほど原価が実態より低く出るので、そこは「まだ入れていない」と分かる状態にしておきます。全部を一度に埋めるのではなく、影響の大きい食材から入れていただくのが現実的です。
Q. 同じ料理でも、店舗によって作り方や分量が違います。
レシピが1本しかない場合は、その1本で計算します。実際の分量と違えば、そのぶん理論と実績の差として出てきます。むしろこの差が出ること自体が、店舗ごとの作り方のばらつきを示す情報になります。店舗別にレシピを分けて登録されている場合は、そのまま店舗別に計算します。
Q. レシピの分量が実態とずれていた場合、気づけますか?
気づけます。計算した使用量と、実際の仕入・棚卸の動きを突き合わせると、特定の食材だけ差が大きく出ます。登録漏れや単位の誤り——グラムとキログラムの取り違えのようなものは、この形で浮かび上がります。レシピの精度を上げるきっかけとして使っていただくほうが現実的です。
Q. 仕込みを本部の工場で作って、店舗に配送しています。
その場合、店舗から見ると仕込み品は「仕入れた商品」になります。工場側の配合まで下ろすか、配送時の単価で止めるかは、原価をどの単位で見たいかによって変わります。どちらの持ち方もできますので、現在の運用をお聞かせいただいたうえでご相談させてください。
Q. この部分は、いま申し込めば使えますか?
使えません。取込と検証は終わっていますが、毎日の更新として本番では動いていないため、時期をお約束できる段階にもありません。いまお使いいただけるのは、日次の売上・人件費・仕入と、実際に計上された仕入にもとづく確定原価までです。ご関心のある企業様には、先行して検証にご参加いただく形でご相談させてください。
TEAL BIについて
TEAL BIは、(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けの経営データ統合ダッシュボードです。複数メーカーのPOSレジ・勤怠・仕入の各データを自動連携し、統一フォーマットに変換したうえで、店舗別・日次でFL比率・確定原価率・人件費の着地見込みを可視化します。複数の飲食企業で本番稼働しています。グループ代表自身が20年以上にわたって飲食店経営の現場に携わってきた経験から立ち上げた事業で、現場の経営者が本当に必要とする数字が実装されているのが特徴です。
この取り組みは、先行して検証にご参加いただける企業様を探している段階です。仕込み品をどの単位で登録されているか、歩留まりをどこまで入れておられるかをお聞かせいただければ、いまの構成で何がどこまで見えるようになるかをお返しします。
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原価表の更新が2回目で止まる:レシピを直せば原価が追随する
「棚卸をするまで在庫が分からない」を終わらせる:レシピ・仕入・販売を1本の線でつなぐ
「セットが売れています」の先が出てこない:商品別の順位を、セットの中身まで開いて見る
執筆:斉田 教継((株)ラックバッググループ / (株)ティールテクノロジーズ 代表取締役) 20年以上にわたり飲食企業の経営に携わる。(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けデータ統合ダッシュボード「TEAL BI」の事業を主導する。一般社団法人オープン・フードサービス・システム・コンソーシアム データ標準化分科会長として、業界共通POS標準フォーマット基盤の構築を主導。




