飲食店の独立を目指すなら、のれん分けが圧倒的に低リスクな話(後編)

飲食業界における独立とのれん分けのメリット

独立を目指す社員にとって、のれん分けは多額の借金を伴うものですが、それによる心理的なストレスを考慮したとしても、新規で自ら店舗を設立する場合に比べて、圧倒的に低いリスクで起業が可能となります。のれん分けを通じて可能となる多額の借り入れは、高いレバレッジ効果を生み出すため、通常の起業では難しいとされる事態を実現させることができます。

この高いレバレッジ効果とは、例えば極端な話で、100万円の資金で起業し年間10%の利益を得ると10万円の利益となりますが、借入によるレバレッジを用いて1億円の資金で起業し、同じ年間10%の利益を得た場合、その利益は1000万円にもなります。このように、高いレバレッジ効果によって結果的に得られる利益は大きくなります。そのため、個人で小規模にリスクを取って起業するよりも、のれん分けを用いて高いレバレッジ効果を持った状態で起業する方が、リスクは低く、得られる利益も多くなります。

また、自分で一から起業する場合、売り上げが少ない状態で、自ら現場に立ちながら事務作業も行う必要がありますが、のれん分けを利用する場合は、これらの事務作業を元の会社に委託することが可能です。これにより、一店舗の経営者として事務作業に追われることなく、本来の業務に専念することができます。さらに、新規出店とは異なり、既存店をそのまま運営できるため、準備期間が不要になり、スタッフもそのまま継続して働くことができます。

既存店のスタッフがそのまま店舗運営に携わるため、新規店で発生する採用コストや教育コストを削減できます。のれん分けにより、最初からいたスタッフが店舗で営業を続け、新規の立ち上げとともに独立した会社で新たにスタッフを採用し、徐々に既存のスタッフと交代することで、スムーズな運営体制を構築することが可能です。

この方法は、リスクを最小限に抑えながら店舗を運営するための効率的な方法です。うまくいけば、のれん分けによる2店舗目の出店や、独自で新規出店することも可能になります。例えば、既存の店舗を譲ってもらうパターンではなく、会社のブランドを用いて全く新しい店を出店するケースもあります。これは、自分がその業態やブランドの運営のスペシャリストであれば、出店場所によってニーズが異なる飲食店の特性を理解し、既存店をそのまま引き継ぐよりもリスクが低い出店が可能です。

このような多様なのれん分けの方法は、大手コンビニチェーンや居酒屋チェーン、食品チェーンなどで長く行われている手法ですが、実際には企業によってそのやり方は異なります。のれん分けを利用して独立することにより、全くゼロから新しい店を立ち上げるよりも、非常に低いリスクで高い成功率を達成することが可能です。さらに、これまでのれん分けを行ってこなかった飲食業においても、この仕組みを上手に活用することで、現場の社員のモチベーションを高め、会社には安定したキャッシュフローがもたらされます。これにより、新しい店舗の出店資金の確保が容易になり、双方にとって多大なメリットがもたらされるのです。

経験の長さや必要なスキルに関しては、のれん分けを行う企業によって基準が異なりますが、一般的には、一人前として店長業務を遂行できるレベルが求められることが多いです。しかし、それ以上に重要なのは、リスクを負ってでも成功を目指す意欲や、大規模な借入をリスクと捉えない精神的な強さです。また、企業にとっては、優秀な人材が独立し、新たなキャリアを築くことで、会社の体制に変化が生じることもありますが、独立した人がそのまま企業の幹部として残るという興味深い方法もあります。これにより、個人は自分の店を持ちながらも、本部での幹部としての役割を果たし、企業は優秀な人材を保持しつつ新たな成功モデルを構築することができます。

以上のように、のれん分けは、飲食業界で独立を目指す個人にとっても、企業にとっても、多くのメリットをもたらす有効な手法です。

投稿者プロフィール

斉田 教継
斉田 教継株式会社ラックバッググループ 代表取締役CEO
新卒で産業機械メーカーに就職。インドで単独での市場開拓を経験。その後、ドイツ商社、外資系生命保険会社で経験を積み、2007年にラックバッググループ共同創業。飲食企業経営をしながら、2020年、飲食業界向け売上管理&分析システムTEAL BIを立ち上げる。飲食経営者兼、飲食業界DX開発者でもある。