【結論】棚卸は、やった日の在庫しか教えてくれません。翌日には仕入が入り、売れて減るので、数え終えた瞬間から数字は古くなっていきます。私たちが取り組んでいるのは、実棚をやめることではなく、実棚と次の実棚のあいだを計算で埋めることです。この記事は、その計算で棚卸の役割がどう変わるかを書いたものです。なお、この計算は本番ではまだ動いていません。そこも含めて正直に書きます。
【この記事でわかること】
・棚卸の夜に、実際どれだけの作業が起きているか
・月に1回の実棚では、差が出ても原因までたどれない理由
・実棚と実棚のあいだを、何を使って埋めるのか
・数えるのをやめる話ではない、ということ
・いまどこまで動いていて、どこからが「これから」なのか
棚卸の夜に、何が起きているか
多くの店で、棚卸は閉店後です。片付けが終わってから、冷蔵庫・冷凍庫・乾物棚・ドリンクの在庫を、紙かタブレットを持って数えていきます。店長が1人で回している店も少なくありません。
やっかいなのは、数え方がそろわないことです。ケースで数える人と、バラで数える人がいます。開封済みのものを「だいたい半分」と書く人と、量る人がいます。同じ会社の同じ商品なのに、店ごとに違う粒度の数字が上がってきます。本部でそれを並べても、店舗間の比較には使いにくくなります。
そして、これだけの手間をかけて出てくるのは、その日その時点の残量が1回ぶんだけです。翌日からはまた分からなくなります。
数え終えた瞬間から、その数字は古くなります
在庫が分かるのは、月に1度の点だけ
点でしか分からない
- 翌日には仕入が入り、売れて減る
- 差が出ても、どの週かは分からない
- 数え方の粒度が店ごとに違う
点と点のあいだが埋まる
- 実棚を起点に、日々の増減を追う
- 差が開いた時期に当たりが付く
- 実棚は「答え合わせ」として残る
右側は、本番ではまだ動いていません。構想と検証の段階です。
棚卸をした日を基準に考えると、その翌日には納品があり、営業をすれば食材が減ります。1日経てば、数えた数字はもう現在の在庫ではありません。それでも次の棚卸まで、それが唯一の手がかりになります。
発注のときに効くのがここです。金曜に届く注文を水曜に出すなら、金曜時点で何がどれだけ残っているかを、人が頭の中で予測していることになります。ベテランの店長ならそれができますが、その予測は引き継げません。人が変わると、そのまま過剰在庫か欠品として出ます。
月に1回の点では、原因までたどれません
実棚をすれば、理論上あるはずの量との差は出ます。ただ、それが分かるのは月末の1回だけです。差が出たことは分かっても、その1か月のどこで開いたのかが分かりません。
原因の候補は複数あります。仕込みで出しすぎている、廃棄が記録されていない、レジに通さず出したものがある、レシピの分量が実態と違う、納品数が伝票と合っていない。どれも「月に1度の差」としてまとめて出てくるので、切り分けられません。
結果として、会議では「原価率が上がっています」までしか話せません。翌月に向けて何を変えるのかが決まらないまま、次の棚卸を迎えることになります。
実棚と実棚のあいだを、計算で埋めます
実棚は、起点であり、答え合わせ
- あいだの日々が数字で埋まる
- 差が「期間」として見える
- 数える作業自体は残る
推測が入るのは使用量だけで、棚卸残高と仕入は実績です。
計算に使うのは、月末の棚卸残高、日々の仕入、そして販売数から算出した使用量の3つです。仕組みそのものは別の記事に書きましたので、ここでは触れるにとどめます。要点は、推測が入るのは「使ったはずの量」だけで、残りの2つは実績だということです。
この形にすると、実棚には2つの役割ができます。1つは計算の起点、もう1つは答え合わせです。次の棚卸で計算値と実際がどれだけずれていたかが分かり、そこで数字をリセットします。ずれが小さければ、そのあいだの数字は信用してよかったということになります。
数えるのをやめる話ではありません
ここは誤解が生まれやすいので、はっきり書かせてください。計算値は実棚を置き換えません。こぼした、傷んだ、記録されていない廃棄があれば、計算値は実際からずれていきます。だから実棚で必ず補正する必要があります。
棚卸の回数を減らせるかどうかは、ずれの大きさが分かってから判断することです。先に回数を減らすと、ずれたまま気づけない期間が伸びるだけになります。まずは今までどおり実施していただき、計算値と並べて見るところから始まります。
もう1つ、対象になるのは棚卸の対象になっている商品だけです。消耗品のように、そもそも数えていないものは計算の対象外です。
いま動いていることと、これからのこと
この記事の中身は、本番ではまだ動いていません。算出結果は1件も出ていません。時期についても、お約束できる段階にありません。できていないことを、できているようには書きません。
いまお使いいただけるのは、日次の売上・人件費・仕入と、実際に計上された仕入をもとにした原価率までです。この記事に書いたことは、その先にある構想です。レシピの取り込みと、仕入商品との突き合わせまでは終わっていますが、毎日の更新として本番で回すのはこれからです。
ですので、この部分についてご案内できるのは「料金表に載る機能」としてではなく、先行して検証にご参加いただく形になります。
実際に本番稼働している連携先
この記事は「何が動いていて、何がこれからか」を主題にしているので、連携先も同じ基準で出します。いま毎日データが流れているものだけを「本番稼働中」とし、そうでないものは分けて書きます。
| 区分 | 連携先 | 状況 |
|---|---|---|
| POSレジ | 東芝テック/スマレジ/USENレジ/NECモバイルPOS/ポスタス(POS+) | 本番稼働中 |
| ローズシステム/寺岡精工/funfo/Chompy(モバイルオーダー) | 本番稼働中 | |
| ステアリテール(FoodFrontia Pro)/グローリー/リブオン(宅配Evolution)/ダイニー | 接続対応中 | |
| 仕入 | インフォマート | 本番稼働中 |
| メニューPlus(レシピ) | 接続対応中 | |
| 勤怠・人事 | ジョブカン/King of Time/タッチオンタイム/SmartHR | 本番稼働中 |
| 予約・口コミ | Googleビジネスプロフィール/TableCheck/Instagram ※Instagramは一部の企業様で稼働中です |
本番稼働中 |
| 外部データ | 気象データ(全国・時間帯別) | 本番稼働中 |
| 上記以外 | ネットワーク未接続の店舗を含む | CSVアップロードで統合対象に含められます |
棚卸の数量そのものは、この表の「仕入」の行——インフォマートから毎日届いています。足りていないのは数量ではなく、そこから毎日の在庫を計算して画面に出す部分です。「メニューPlus(レシピ)」が接続対応中になっているのがそこにあたるので、この行についてだけは稼働の時期をお約束していません。
よくある誤解
「うちは毎月きちんと棚卸をしているので、困っていません」
きちんとされている会社ほど、その1点の数字は正確です。ここで申し上げているのは精度の話ではなく、点の数の話です。年に12回しか在庫が分からない状態では、差が出たときに原因の期間を絞れません。むしろ正確に数えておられる会社のほうが、あいだを埋めたときの効き目が大きくなります。数え方をご相談したいというご依頼ではありません。
「レシピを全部登録しないと、始められないのでは」
全部は要りません。売れている順に上から進めていただくのが現実的で、実際の試算では上位66メニューで売上の約50%、242メニューで約80%がカバーできました。まず形にする段階なら、上位から数十件で十分です。ただし、いまはまだ本番で動いていない部分なので、この段階で確かめられるのは、レシピと仕入商品の紐付けがどこまで埋まっているか、というところまでです。
「在庫を減らしたいわけではないので、あまり関係がなさそうです」
在庫を削る話ではありません。狙いは、原価率が動いたときに理由を2つに分けることです。仕入値が上がったのか、使う量が増えたのか。この2つは打つ手がまったく違うのに、月次の原価率だけを見ていると区別が付きません。在庫の量そのものに関心がなくても、この切り分けは効きます。
料金と、導入までの流れ
TEAL BIの料金は1店舗あたり月額8,000円(税抜)だけです。初期費用・導入費用・連携費用はいただいていません。日次の売上・人件費・仕入と、実際に計上された仕入をもとにした原価率は、この料金の範囲で今日からお使いいただけます。オプション料金という考え方をしていません。
導入は、いまお使いのPOSレジと勤怠システムの構成をお聞きするところから始まります。すでに接続実績のあるものであれば、やり取りは短く済み、約1週間で稼働を開始できます。掲載していないものが混ざっている場合も多くは連携可能で、その際はメーカー様との打ち合わせのうえ新規の連携開発を行います。期間の目安は1か月程度です。いずれの場合も月額8,000円のままで、連携のための費用はいただきません。
一方で、この記事の主題である毎日の在庫の算出は、料金表に載る「機能」としてご案内できる段階にありません。いま申し込めば使えます、というご案内はしないことにしています。ご関心のある企業様とは、先行して検証にご参加いただく形でご相談させてください。
いまお使いいただける範囲の画面と機能をひととおりご覧になりたい場合は、サービス紹介資料(全10ページ)をご請求ください。フォームのご入力後、その場でダウンロードいただけます。
よくあるご質問
Q. 棚卸の回数を減らせるようになりますか?
減らす前提では作っていません。まずは今までどおり実施していただき、計算値とどれだけずれるかを見るところからです。ずれが小さいことが続けば、頻度を見直すご相談はできますが、それは結果を見てからの判断になります。先に回数を減らすと、ずれたまま気づけない期間が伸びるだけです。
Q. 数え方が店舗によって違うのですが、そろえる必要がありますか?
そろっているほうが精度は上がりますが、そろえてからでないと始められない、という性質のものではありません。粒度がばらついていても、同じ店舗の前月と今月を比べることはできます。まずは現状のまま並べてみて、ばらつきが影響している商品が見えてきたところから手を入れるほうが現実的です。
Q. 対象になるのは、どの商品ですか?
棚卸の対象になっていて、月末の残高がある商品です。消耗品のようにそもそも数えていないものは対象外になります。また、レシピの食材に仕入商品が紐付いていない場合、その食材については計算に入りません。どこで止まっているかは分かる形にします。
Q. 差が出たときに、原因まで特定できますか?
原因そのものを断定はできません。できるのは、差が開いた時期と商品を絞り込むところまでです。特定の週から急に開いた、特定の食材だけ差が大きい、という形で出てくるので、そこから先は現場で確かめていただくことになります。それでも、月に1度の合計だけを見ているのとは、確かめる範囲の広さが変わります。
Q. 実棚を入力する手間は増えますか?
増えません。棚卸の数量は仕入システム側にすでに入っているものを取り込むので、TEAL BIのために別途入力していただくことはありません。仕入システムを通さずに棚卸をされている場合は、取り込みの方法を個別にご相談させてください。
Q. 検証に参加すると、何をすることになりますか?
まずレシピの登録状況と、レシピの食材に仕入商品がどこまで紐付いているかを確認させていただきます。空欄がある場合は、直近の仕入実績と照合してこちら側で候補をお出しし、ご確認をお願いする形になります。日々の運用を変えていただく必要はありません。
Q. いま契約すると、この記事のどこまでが使えますか?
この記事に書いた毎日の在庫の算出は含まれません。お使いいただけるのは、日次の売上・人件費・仕入と、実際に計上された仕入をもとにした原価率までです。ここを曖昧にしたままお申し込みいただくのは本意ではないので、線をはっきり引かせてください。
TEAL BIについて
TEAL BIは、(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けの経営データ統合ダッシュボードです。複数メーカーのPOSレジ・勤怠・仕入の各データを自動連携し、統一フォーマットに変換したうえで、店舗別・日次でFL比率・確定原価率・人件費の着地見込みを可視化します。複数の飲食企業で本番稼働しています。グループ代表自身が20年以上にわたって飲食店経営の現場に携わってきた経験から立ち上げた事業で、現場の経営者が本当に必要とする数字が実装されているのが特徴です。
この取り組みは、先行して検証にご参加いただける企業様を探している段階です。棚卸をどの単位でされているか、レシピをどこまで登録されているかをお聞かせいただければ、いまの構成で何がどこまで見えるようになるかをお返しします。
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執筆:斉田 教継((株)ラックバッググループ / (株)ティールテクノロジーズ 代表取締役) 20年以上にわたり飲食企業の経営に携わる。(株)ラックバッググループが提供する飲食企業向けデータ統合ダッシュボード「TEAL BI」の事業を主導する。一般社団法人オープン・フードサービス・システム・コンソーシアム データ標準化分科会長として、業界共通POS標準フォーマット基盤の構築を主導。




